自然を称えるジュエリーのきらめき

 糺の森を抜け、境内に入った細殿に、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーが展示されている。

 会場は障子で囲まれた空間で、柔らかな自然光の他は展示台と足元の光だけ。静謐でありながら、幻想的な空間がそこには広がっている。

 移ろいゆく季節の中、一瞬きらめく自然の美しさ。その儚さを永遠の輝きにまで昇華したジュエリーの花々がそこには咲き乱れている。

 ヴァン クリーフ&アーペルでは1907年から花をモチーフにしたジュエリーを作成しており、現在に至るまでメゾンの大切なインスピレーションのひとつになっている。

 今回の展示では、1930年代のものから90年代のものを中心にミュージアムピースを揃えている。そのコレクションが一堂に会することはもちろん、コンテンポラリー作品とミックスで展示されるというのも、またとない機会だ。

 什器は落ち葉の山の内壁と同様に久住氏が担当。水面に、さまざまなきらめく花がたゆたっているように展示されている。

 自然と真摯に向き合い、職人が丹精を込めて完成させたジュエリーは水の流れをイメージした背景の中、生き生きとまるで動き出しそうな軽やかさ。

 メゾンが、自然から得た感動をインスピレーションに、その美しさを表現する術を見出してきた歴史が感じられる。

生命活動を凝縮した創造空間

 ジュエリーの花々を堪能したら、川を渡り、メインの展示会場へ。

 一見、会場の外観は今回の開催時期でもある秋や冬を思い起こすような印象を受けるかもしれない。しかし、一歩会場へ足を踏み入れるとそこには驚きの空間が広がっている。

 そう、そこはまさに落ち葉の下の世界。枯れ葉一枚一枚を拡大したイメージから陽の光が射しこみ、花と光が揺らめく水面に反射する。糺の森の自然との一体感とはまた異なる幻想空間へ誘ってくれる。

「今回のキービジュアルには、花とともに枯れ葉を選んでいます。一枚の枯れ葉を手に取って見てみると、虫食いの後があったり、色のグラデーションがあったり。それぞれに世界で一枚の美しさがあります。この世界を表現したいと思ったんです」(片桐氏)

 きらめく一瞬の美を永遠の美に形作るヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーと、限りある花の命を季節の循環という形で表現することで永遠の美に辿りつく片桐氏の展示。両者のクリエイティブの根本が一緒であることに気づかされる。

 「LIGHT OF FLOWERS 花と光」の展示期間は12月12日(月)まで。期間中は毎日片桐氏が訪れ、お花に手を入れるという。季節が流れることで、落ち葉の色合いも自然と変化し、メイン会場の水面に活けられる花も移ろっていく。

 普段生活をしている中で当たり前のものになってしまっている自然の美。自然とジュエリーが称え合うこの展示を見ることで、一期一会の自然世界の美しさに改めて気づかされるはず。貴重なこの機会、是非お見逃しなく。

片桐功敦(かたぎり・あつのぶ)

花道みささぎ流家元。1973年大阪生まれ。人類が原始的にもつ、植物や自然への憧憬や畏敬の念を具現化するために、民俗学を手掛かりに、いけばなの技術を用いた表現方法を模索している。出版に写真集『Sacrifice-未来に捧ぐ、再生のいけばな』(青幻舎 2015)などがある。近年の展覧会にヴァン クリーフ&アーペルとコラボレーションした「LIGHT OF FLOWERS ハナの光」(代官山T-SITE GARDEN GALLERY 2021)、国際写真展「KYOTOGRAPHIE」(二条城 2021)他。

「LIGHT OF FLOWERS 花と光」

会期 2022年11月3日(祝・木曜)~12月12日(月曜)
開場時間 10:00~17:00
会場 世界遺産 下鴨神社(賀茂御祖神社)境内
所在 京都府京都市左京区下鴨泉川町59
※予約不要、入場無料

2022.11.14(月)
文=CREA編集部