大衆の人気こそが戦後皇室を支えてきた歴史と、令和の皇室における秋篠宮家の長女・眞子さんと小室圭さんの結婚についてどう受け止めるべきなのか。『李王家の縁談』を上梓した林真理子さんと東京大学名誉教授の御厨貴さんが、象徴天皇制を揺さぶった皇族の結婚問題について語り合った、「文藝春秋」2021年11月号掲載の対談を公開する。(全2回の1回目/後編に続く)

(※年齢、日付、呼称などは掲載当時のまま)

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眞子さまに国民の声は響かなかった

林 眞子さまと小室圭さんのご結婚がついに実現しそうだ、とどこへ行ってもその話題で持ち切りです。世間では“駆け落ち婚”なんて言われているようですね。

御厨 急転直下で年内結婚、と相成りそうですね。

林 お2人の婚約内定の発表からこの4年間は、大変な大騒ぎになっていましたし、各々の皇室観や結婚観をめぐって国内が分断されているような状態です。現在に至っても、必ずしも祝福ムードにはなっていないように見えますが……。

――毎日新聞が行った世論調査では、眞子さまのご結婚を「祝福したい」という人が38%、「祝福できない」が35%、「関心がない」が26%という結果だったそうです(9月18日付)。

御厨 私はね、大衆の人気こそが戦後皇室を支えてきた歴史を振り返ると、この数字には隔世の感を禁じ得ません。皇族の結婚を「祝福したい」という声が4割に届かないというのは考えられない。

林 お父様の秋篠宮さまも3年前の誕生日会見で「多くの人がそのことを納得し喜んでくれる状況、そういう状況にならなければ、私たちは、いわゆる婚約に当たる納采の儀というのを行うことはできません」と発言されていました。これは「皇室は国民と共にある」というお考えから出たお言葉だと思います。でも結局眞子さまの心には国民の声は響かなかったということなのでしょうか。

御厨 どうでしょう。ただ私は、眞子さまの今回のご決断が、戦後の象徴天皇制を支えてきた根幹部分を揺さぶるような、本質的な問題をあぶり出したと考えています。

2022.02.15(火)
文=「文藝春秋」編集部