「“女のクソ仕事”が来ないようにしたい」『M-1』YouTube動画から異例のブレイク、Dr.ハインリッヒが語る“強烈”すぎた「トラウマ体験」 から続く

 今、女性芸人の世界が揺れている。女性芸人といえば、当たり前のように「ブス」「デブ」「非モテ」をいじられ、そこで強烈なインパクトを残すことが成功への足がかりとされてきた。

 しかし、持って生まれた容姿や未婚か既婚かどうかの社会属性などを「笑う」ことに対して、今世間は「NO」という意思表示をし始めている。「個人としての感覚」と「テレビが求めるもの」、そして「社会の流れ」。三つの評価軸の中に揉まれながら、女性芸人たちは新たな「面白さ」を探し始めている。

「ネタで全勝ちしたい」。テレビでの“女芸人用の仕事”を拒否したDr.ハインリッヒが選んだ道。それは『M-1』に届くことは叶わなかったものの、確実にファン層を広げ、ハインリッヒ中毒者を増やし続けている。

『M-1』卒業を機に舞台を去る決断をする芸人も多い中、『M-1』ドリームならぬ、“『M-1』決勝に行かないドリーム”を体現する二人。あの祭りの向こう側にはどんな世界が広がっていたのか。なぜ『THE W』は『M-1』になれないのか。Dr.ハインリッヒがフェミニズムを求めた、その理由。(2回中の第2回/1回目を読む)

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『THE W』には出ないと宣言…『M-1』との違い

――一昨年の『M-1』、Dr.ハインリッヒさんが準々決勝で終わったことには、納得していないネットの声も多かったですね。ネタ動画の再生数は60万回を超えていたのに。

 決勝に出たかったなあ、優勝したかったなあというのは、思っていますね。でも命を懸けたものがそこに届かんかったというのは、あかんかったことはあかんかったのかな、とも思います。ある程度面白い人らばかりになったら、あとはもう好みだっていうのはしょうがない。たぶん予選の審査員が替わらないかぎりは無理やったんやなと思います。

2022.02.04(金)
文=西澤 千央