薬局のお姉さんおすすめのラグマンをいただく

フラフラ歩いて来た私に薬剤師さんは「旅行者ですか? どこか体調を崩したんですか?」と英語で聞いてくれました。

 ハチミツの入ったバッグをおろし事情を説明すると、薬剤師さんが私の買ったハチミツの量を見て大笑いしました。

 この薬剤師さんはすごく良い人で「キルギスは高山があるおかげでたくさんの薬草が取れる」という話や、その薬草を使って行う民間療法が発達している話などもしてくれました。

 たしかに薬局の中にはいくつか山の中で見たお花や草が描かれている箱や瓶もあって、その中のひとつを手に取ると、「これはマリアアザミという植物です。マリアアザミは古代のギリシャ、ローマ時代から肝臓の薬として使われているのですよ。とてもおすすめです」と教えてくれました。

 その他にも私が何かを見ていると、薬剤師さんはナビゲーターのようについてきて、ひとつひとつにおもしろい説明をしてくれました。

 お土産が買えてホッとしたら、お腹が空いていることに気づいたので、この親切な薬剤師さんおすすめのレストランに行くことにしました。

 またこの薬剤師さんは私の荷物を心配して、お店で預かってくれました。

 薬局から5分のレストラン「ファイザー」は地元の人に大人気のレストラン。普段はすごく並ぶと聞いていましたが、この時は少し時間が遅く、割とすぐに入ることができました。

 メニューはたくさんありましたが、薬剤師のお姉さんにおすすめされた「ラグマン」を注文。

 注文を聞きにきたお兄さんに「辛いのは食べられますか?」と尋ねられたので、何が出てくるのか少しドキドキです。

 出てきた料理に、トッピングの唐辛子の調味料が付いてきたのを見て少しホッとしました。

 キルギスの有名な料理ラグマンはいくつか種類があります。元々はトムヤムクンみたいな酸味のあるスープにうどんが入ったもののようですが、私のところに出てきたのは、焼うどんみたいでした。他につけ麺スタイルのものもありました。

 麺とお肉、野菜をウスターソースとトマトソースで炒めた感じで、サラダもシンプルですがハーブのディルが入ってとてもおいしかったです。

 トッピングの唐辛子はとても辛かったけど、キルギスの料理は香辛料やハーブが豊かで、食べていてとても楽しい気持ちになりました。

 薬剤師のお姉さんにラグマンの感想やお礼を伝えて、ホストハウスに帰りました。

 お家に帰るとおばあちゃんと孫のナズカが出迎えてくれて、荷物を一緒に部屋まで運んでくれました。

 おばあちゃんもナズカも私が持っているカバンの重さにびっくり。中を見たおばあちゃんが「ベック、荷物のほとんどがハチミツじゃない!?」。「日本でハチミツ屋さんでも開くつもり?」とナズカも大笑い。

 「あなたそんなにハチミツが気に入ったのね」おばあちゃんはそう言うと、キッチンに向かい棚の奥から一番大きい瓶を持ってきました。

 「これは私のお気に入りの山で取れた天然のハチミツよ。これも良いものだから持って帰りなさい!」とカバンに入れてくれました。

 簡単な身支度をして車に向かうと孫のナズカが庭の杏を取り袋に入れて「帰りに食べて」と渡してくれました。

 今回のキルギスの旅は、この家族のおかげで安全に楽しく過ごしことができました。この家族に紹介していただいた親戚のみなさんも、親切で優しい方たちでした。

 またキルギスには行きたいと思っているので、その時にはまたこの家族に会いに行くつもりです。

 日本に着き、20キロ以上のハチミツはお世話になっている方たちにあげました。残りの10キロ弱のハチミツは私が1人で食べました。

ベック

1991年10月30日、韓国・ソウル生まれ。武蔵野美術大学大学院油絵学科修了。
韓国語、日本語、英語の3ヵ国語を話すトリリンガル。アーティストとして東京を拠点に個展などで作品発表を続け、TBS系『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』などに出演中。
Instagram:@baek1030
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