「スーパーノーマル」というデザイン理念の活動も開始

 帰国後、「ふつう」や「日常」のなかにデザインの本質を求めて、再出発した。多忙を極めるなか、「スーパーノーマル」というデザイン理念の活動も開始する。

「これがみんなのノーマルだよねというデザインの提案。自分のなかでは無我なもの、格好よく作ろうと思っていないものとオーバーラップした」

 デザインが作る工業製品と手仕事、それらの魅力について伺えば、「手は、メタファーというか、表現の仕方。手仕事にも道具は必要で、今は道具の方が進化を遂げ、手の意味は薄れてしまった。ある時代、人が製品の精度を求めていくがために手仕事はどんどん置いていかれたけれど、今は逆に人間味があり、味がある、みたいな美学がある」。

 工業製品がその精度を崩して手仕事のように作る技術さえ存在する現代であることを否定できるかといえば、できないと思うと言う。

「手仕事は、自然物を利用する。籠や芭蕉布など自然のものから学び、作る。その魅力にはかなわない。それには手間がかかり、その手間が価値になってしまっているところがある。もはや“手”で作っているかどうかではなくなっているのが今の手仕事」

 だが、自然に向き合い、大量生産できない手仕事は、少量消費でモノと長く付き合いたいという現代のエシカルな意識に適う魅力も備える。

「加えるなら、巡り合い。旅に出て“おっ”という出合いがあるときが一番嬉しい。その願望があるから旅にも行く。旅先で発揮される人間のセンサー、なんとなく良さそうと思う所でいいものに出合えると嬉しいですね」

 台湾の路上では、竹でスツールを編む老人たちの現行品より、長年彼らが使用する古い方に魅力を感じて交渉したり。

「経年変化の魅力もありますよね。開化堂の茶筒は経年変化の色サンプルがあり、そこまで使い込まないとこの色にならない。その育てる時間がcome on! と言ってる感じ(笑)」

Text=Chiyo Sagae
Photographs=Atsushi Hashimoto