HERMÈS

ブレスレット「コリエ・ド・シアン」

 私は、ジュエリーを軸にしてスタイリストの仕事をしていますが、いつも思うのは、どんなに素敵なモノでもその人に似合っていなければ素敵には見えないということ。

 逆に、今の自分には少し背伸びと感じても、毎日つけていれば自然と馴染んで、必ず似合うようになります。

 大事なのは、毎日つけたいと思えるくらい、好きと思えるかどうか。「これ、すごく好き」と思えるモノは、自分らしさの種となり、あなたという人の輪郭を描いてくれるものになる。

 この連載では、私自身が「いいな、好きだな」と思うモノをご紹介していこうと思います。

 私は、同じ素敵なモノでも、流行を反映した一過性のモノと、時代を超えて愛し続けられる魅力を宿したモノと2通りあると思っています。

 人の輪郭を形作ってくれるのは、後者です。

 皆さんが、自分の「好き」を知り、一緒に人生を冒険していこうと思えるようなモノに出合うヒントになったら……そんな気持ちで選んでいきますね。

 最近、久しぶりに一目惚れしたのがエルメスのオールブラックの「コリエ・ド・シアン」です。

 もともと、レザーやシルバーのものはあったのですが、こちらは2020年初登場。

 私が惹かれたのは、ギラッとしていないマットなブラックというところ。特徴的なスタッズも、ボディと同じ質感の黒ゆえ、インパクトはあるけれどさりげないのが私好みです。

 手元にはいつもゴールドの地金のブレスレットをつけているのですが、これをしたら、反対の手にはシルバーのブレスならバランスがいいかなとか、手首に小さなスカーフをあしらって重ねるのも素敵かもとか、いつもの私にはなかったコーディネイトが即座に思い浮かんだのもポイント。

 こんな風に、それをつけることで、新しいおしゃれの扉が開かれるかどうかも買うかどうかの選択基準です。

 じゃ、これに合う洋服は? 髪型は? と考えるうちに、いつしか自分のスタイルが進化していく。このバングルにはそのパワーがあると思います。

伊藤美佐季(いとう みさき)

ジュエリーディレクター、スタイリスト。フィレンツェに遊学、帰国後スタイリストに。つける人の個性を生かしたスタイリングは、女性誌のほか多くの女優からも支持が厚い。著書に『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』(ダイヤモンド社)
Instagram @jewelryconcierge_m

Column

伊藤美佐季のSource of yourself

ジュエリーディレクターの伊藤美佐季さんが指南する、大人のためのジュエリーの選び方と、つけ方のエッセンスを連載でお届けします。

2021.04.01(木)
Text=Miwako Yuzawa
Styling=Misaki Ito
Photographs=Masahiro Sambe

CREA 2021年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

今こそ、素肌と筋力を鍛える

CREA 2021年春号

お手入れは裏切らない!
今こそ、素肌と筋力を鍛える

特別定価860円

CREA2021年春号では、スキンケア、ボディケアを大特集。ニューノーマルな暮らしのなかで、心地よさを感じ、美しさを醸し出せるのは健やかな美肌や筋力があればこそ。ほかにも、春のレシピやインテリア、新たな視点で巡る旅なども1冊に。さまざまな楽しみを詰め込んだCREA2021年春号を是非ご覧ください!