クラウズーラ(出入り禁制)の
修道院で買う“本物”とは?

 パレルモの各修道院に伝わる伝統レシピを再現したシチリア菓子が買えるのは、「イ・セグレーティ・デル・キオストロ(回廊の秘密)」。

 パレルモの最も重要な教会のひとつ、サンタ・カテリーナ教会併設のクラウズーラ修道院の中にあります。

 クラウズーラ修道院とは、いわゆる観想修道院のこと。修道女は生涯外界との接触を避け、修道院の中だけで祈りを捧げ、日常生活を送ります。

13世紀に基礎ができたサンタ・カテリーナ教会。現在の教会は1596年に完成。シチリアン・バロックで飾られた壮麗な内観。
クラウズーラ修道院が併設され、修道女は一般信者に顔が見られないよう鉄製の格子窓越しにミサに参加していた。
翼廊にある「ルオータ・デル・オッフェルタ」(寄付の回転式受付口)。外部の人間との直接的な接触ができないため、寄付や供物などを載せて回転させ受け取っていた。育てられない赤ちゃんの受付窓口になっていた教会もある。

 イタリア統一後、多くの修道院が統合・閉鎖されるなか、生き続けたサンタ・カテリーナ修道院には、かつて、400人もの修道女が暮らしていたそうですが、1980年代にわずか2人に。

 それでも伝統のお菓子作りは続き、販売もしていたそうです。ちなみに現在の人数はゼロ。

パレルモ旧市街の中心地プレトリア広場に面して建つサンタ・カテリーナ教会(奥)。右手はパレルモ市庁舎。

 昨年、700年にわたって閉ざされてきた修道院施設の一部が一般開放され、同時に「イ・セグレーティ・デル・キオストロ」はスタートしました。

 発起人は、同名の書籍の著者であるマリア・オリヴェーリさん。

 口頭でしか伝えられてこなかった修道院のレシピを研究・収集し、シチリア人有名シェフ、ジュゼッペ・ジュフレさんの協力のもと、本物の伝統菓子の再現に成功。同店では、その味のみならず、「伝統菓子は修道院で買う」という古き良き時代の習慣を伝えています。

 ヴェルジニ修道院最後の修道女(90ウン歳)へのインタビューなど、主要な20軒余りの修道院から発掘・救出されたレシピには、カンノーリやカッサータをはじめ、トリオンフォ・デル・ゴーラ、フェッデ・デル・カンチェッリエレなど、もはや知る人ぞ知る幻の伝統菓子も。

ヴェルジニ修道院の幻のパレルモ伝統菓子「トリオンフォ・デル・ゴーラ」。90歳オーバーの修道女ジュゼッピーナさんによって完全再現。マリアさんによればネット上に散見されるレシピとはだいぶ異なるとか。ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサの名作小説『山猫』にも登場するお菓子。

 まさに失われつつあったオリジナルのレシピで再現されたシチリア伝統菓子は、珍しいドルチェはもちろんのこと、厳選されたシチリアの素材と丁寧に手作りする優しい味が、すこぶる美味しいと地元でも大評判です。

 いつかパレルモにお越しの際は、「ここでしか食べられない」本物の味を、ぜひご賞味ください!

I Segreti del Chiostro
(イ・セグレーティ・デル・キオストロ)

所在地 Monastero S. Caterina d’Alessandria, Palermo
電話番号 327-5882302
https://www.facebook.com/I-Segreti-del-Chiostro-370831363316000/
●参考 I Segreti del chiostro/Maria Oliveri著 IlGenio Editore刊

岩田デノーラ砂和子

2001年よりイタリア在住のライター/コーディネーター/通訳。現在はシチリア州パレルモ在住。メディアから個人旅行者までイタリア専門コーディネートチーム「La Vacanza Italiana」を主宰・運営。イケメン犬ボン先輩とヤラカシ系イタリア人の夫との日々を綴るBLOG「ボン先輩は今日もご機嫌」も大人気。イタリア関連書籍も多数手がけ、イタリアで5万部越えベストセラーの日本語版『I LOVE TOKYO』がただいま絶賛発売中!

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文・撮影=岩田デノーラ砂和子