42の古社寺に守り伝えられてきた名宝の数々

 今回の展覧会では、延暦寺、園城寺(三井寺)、石山寺ほか、琵琶湖をめぐる42の古社寺に守り伝えられてきた仏像、神像、仏画、垂迹画、絵巻物、経巻、工芸品など、国宝6点、重要文化財56点を含む約100点を出展、近江の神と仏にかかわる数々の名宝に、東京にいながら接することができる。

重文 善水寺 誕生釈迦仏立像 奈良時代

 仏像は古いところでは奈良時代の小さな金銅仏から見ることができる。この寺に入った最澄が、桓武天皇の病気治癒のために霊水を献上したことから、現在の名に改めたという伝説が残る善水寺からは、釈迦の誕生直後の姿を表した「誕生釈迦仏立像」が出展。幼く愛らしい姿ながら、腹や腕にくびれをつけ、ふくよかな肉体を強調している。

 平安時代になると、石山寺の「如意輪観音半跏像」、園城寺の「不動明王坐像」、葛川明王院の「千手観音立像」などが。また当時は神像も仏師が手がけていたと考えられており、この時代に作られたものの中でも特に優美な、貴族女性の佇まいを思わせる建部大社の「女神坐像」に目を奪われる。

左:重文 園城寺 不動明王坐像 盛忠作 平安時代 長和3年(1014)
右:重文 葛川明王院 千手観音立像 平安時代
重文 建部大社 女神坐像 平安時代

 また鎌倉時代の仏像では、快慶の早い時期の作で、溌剌とした顔付き、バランスの良い体軀を備えた石山寺の「大日如来坐像」、その弟子とされる栄快が制作した長命寺の「地蔵菩薩立像」も見逃せない。西教寺から出展される鎌倉時代の「薬師如来坐像」は、通常客殿に安置されている秘仏で、もとは白河天皇が創建した法勝寺(ほっしょうじ)の仏だったと言われており、9月8日~10月28日に期間を限って公開している。

左:重文 石山寺 大日如来坐像 快慶作 鎌倉時代
右:重文 西教寺 薬師如来坐像 鎌倉時代 (展示期間:9/8~10/28)
国宝 聖衆来迎寺 六道絵(等活地獄図) 鎌倉時代 (展示期間:10/30~11/25)

 特に絵画は、長時間の展示を避けるため、会期を3回に分け、全作品を3回展示替えする。要はより多くの作品を見ることができる、ということだ(その代わり展示替えごとに会場に足を運ばなければならない)。聖衆来迎寺からは生き物が輪廻転生を繰り返す六つの世界を描いた六道絵から「等活地獄図」(国宝、10月30日~11月25日公開)、他に安楽律院「阿弥陀三尊二十五菩薩来迎図」、延暦寺の「山王本地仏像」など、貴重な仏画・垂迹画が一堂に会するまたとない機会。

 展示を見て、もしなにか感じるものがあったら、ぜひ湖国・近江へも足を運んでほしい。お決まりの京都奈良とは少し違う、湖の畔に花ひらいた美と独自の風土が、あなたを待っている。

特別展「琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」
会場 三井記念美術館
会期 9月8日(土)~11月25日(日)
休館日 月曜日 【※10月8日(月・祝)は開館、10月9日(火)は休館】
料金 一般1200円
問い合わせ先 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

 

Column

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古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2012.09.29(土)