#156 El Nido
エルニド(フィリピン)
南北約397キロ、東西約40キロの細長いパラワン島北部の西側、南シナ海に浮かぶエルニド諸島。
豊かなマリンライフを誇り、貴重なタイマイやアオウミガメの産卵地でもあることから、1998年にエルニド-タイタイ管理資源保護区として指定された地域です。大小45の島々が属し、そのうち日本でもおなじみの存在は、ミニロック、パングラシアン、ラゲンのエルニドリゾーツの3島でしょう。
マニラから国内線で約55分のエルニド・リオ空港から、車で数分も走ると、リゾートへ渡る桟橋に到着。ボートに乗り込み、まずはミニロックアイランドへ。
穏やかな海に、神様の手による粘土細工のような、様々な形の石灰岩の島々が点在しています。ボートで風を受けていると、数時間前まで喧噪かつ雨季のマニラにいたのが遠い昔のよう。ここは、まるで別天地です。
黒い断崖絶壁の島々を見て、ふと思い出したのが、“黒大理石の島々”という言葉。エルニドを紹介する文でよく使われていますが、あたりを見ると、どうも石灰岩のようです。
「あの島、石灰岩ですよね?」と、ガイドさんに聞くと、「そうだよ。石灰岩だ」。
「黒大理石の島はどこですか?」と、さらに聞くと、「あぁ、あれが黒大理石だ。日本人は石灰岩のことを黒大理石と呼ぶんだ」。
ガイドさんの答えに、頭の中で「?」マークが踊ります。
“神々の島”と呼ばれるミニロックアイランドは、港から約45分。標高300メートルの高い断崖のふもとに、ヤシの木々とナチュラルなコテージが並ぶ、愛らしい箱庭のような雰囲気です。
ゲストが到着すると、集まったスタッフがギターやパーカッションを演奏しながら、歌で歓迎してくれます。心温まるウェルカムソングです。
環境保護に積極的に取り組むリゾートゆえ、環境の担当スタッフも常駐しています。オフィスを訪ねて、係員のビアンカさんに先ほどと同じ質問をしてみました。
「この界隈の島々は石灰岩です。浸食されて黒くなっているのを見て、黒大理石と勘違いしたんじゃないかしら。でも、石灰岩と大理石は違うものですよ」
どうやら長い間、勘違いをしていたようです。
後日、ビアンカさんは地質学者にエルニドの地質について聞いてくれたらしく、メールが届きました。
それによると、ミニロックの石灰岩は、ペルム紀後期(およそ2億6,000万年前)に形成されたもので、北パラワンの他の石灰岩よりも年月が経っているとのこと。気が遠くなるような年月をかけて形成された自然を前にすると、石の種類なんて、どうでもいいことに思えてきます(いや、大事ですが)。
ミニロックアイランドは2018年12月のリニューアルオープンに向けて現在クローズ中。客室数は変わらず、こぢんまりとしたアイランドリゾートになるそうです。
2018.08.25(土)
文・撮影=古関千恵子