京阪本線枚方公園駅から徒歩約5分。枚方宿の歴史を紹介する「市立枚方宿鍵屋資料館」があります。江戸時代、京都・伏見と大坂を結ぶ京街道の宿場町・枚方宿は、淀川舟運の中継港でもあり、水陸両方の交通の要衝地として栄えました。
当時の面影を今も残す建物「鍵屋」は、淀川・三十石船の船待ち宿として繁昌し、近代以降は料理旅館としてにぎわったそう。前に立つだけで、江戸時代にタイムスリップした気分になれます。
その隣のビル・鍵屋別館1階にあるのが「ひねもすぱん」。ガラスの引き戸の向こう、細長いスペースの棚にここならではのぱんやクッキーが並び、その奥にはオーブンを備えた工房が見えます。
右:こちらが「ひねもすぱん」の入口。
ぱんを作るのは清生(せいりゅう)和代さん。
「ぱんが大好きで、ずっと趣味で自分ならではのぱんを作っていました。そのうち天然酵母の魅力にはまり、おいしいぱんができないかと1年位かけて試行錯誤を繰り返したんです」とにっこり。
手作り市などでも販売し、ファンも増えたと言います。そして、2014年7月、現在のビルの1階奥で自店をオープン。2017年10月10日、念願だったカフェを併設して、ビルの入口近くの場所に移転、リニューアルオープンしました。
清生さんが作るのは「素材のうまみを自然の力でひきだした噛むほどに粉の風味や素材の味を感じることができる」ぱん。「カタカナのパンではなく。ひらがなのぱんです」とにっこり。
4日程かけて干しブドウから起こした天然酵母に、粉と水を合わせて4日程かけて元種を作ります。その元種に粉・水・塩を加えてこね、ゆっくりじっくり発酵させ、一晩寝かせたあと5時間前後でぱんが焼き上がります。
「卵、乳製品、動物性食品は使っていません。素材は、国産小麦粉など、できるかぎり、国産、オーガニックのものにしています」。清生さん自身はベジタリアンですが、「お客様には強調したくありません。毎日食べても飽きないシンプルなぱんとおやつ、どなたが食べても身体に優しくておいしいことを目指しています」
まずはおやつぱんをご紹介しましょう。
人気No.1の「きなこぱん」は、中に香ばしいきな粉餡がたっぷり。オーブントースターで少し温めると、さらにきな粉の香りが際立ちます。
「メロンぱん」は、卵、乳製品不使用。プレーンの他、ココア(キャロブ)やよもぎ、柚子など、様々な種類があり、外はカリカリ、中はモチモチ。アレルギーの子供に喜ばれています。「同じく、卵も牛乳も使わないクリームぱんも大人気なんです」と清生さん。
「しゃっぽ」は、中のチョコ風味のクリームと、上にかかったねっとりした生地とのマッチングが楽しい一品。「有機カカオと有機ココナッツを合わせたもの。とろんと溶けてクリームみたいでしょう」。女性に人気だそう。
「柿ごろん」は、あんぽ柿が丸ごと入っていて、びっくり。あんぽ柿の中にきな粉餡をしのばせてあり、奥深いおいしさ。
「おやきぱん」は、サクッとした食べやすい生地で、中にホクホク、小豆の風味豊かな粒餡が入っています。よもぎの香りがさわやか。
「ベリーロール」は、濃厚なキャロブ生地にスパイシーなオールスパイス、甘酸っぱいベリーの組み合わせ。
「ココナッツふれんち」は、ココナッツの風味が噛む程に口の中に広がります。自家製のクリームをはさんだ「レーズンクリームサンド」もおいしい。
次は、甘くないぱん。
「もどきふらんす」は、「チーズじゃないチーズ入り」と清生さん。豆乳を使っているのだそう。
「よくばりカンパーニュ」は、生地にくるみとカレンツ、ココナッツが入っていて、ほんのり甘い。
「リースクレセント」は、チーズを使っていないのに、なぜかチーズ味。むちっとした生地で、端っこはカリカリ。
「くるくるデーツ」は、ホクホクして優しい甘さのデーツ(ナツメヤシ)に、ヘーゼルナッツをプラス。
「シナモンりんご」は、ハワイ島に旅した時に出合った味わいを再現。シナモンが効いて印象的。「同じくハワイ島で食べたココナッツ餡に感動して、ミカンと合わせたぱんも作りました」と清生さん。
全粒粉の「ふらんすぱん」は、粉の香りが豊かで、食べ飽きることがありません。
食ぱんは季節商品も含めて13種類の記事があり、通年の商品は8種類。
「山食ぱん」は、プレーンの他に、「玉乃光」の酒粕を使ったもの、大阪府交野産の柚子を入れた香り豊かなもの、ショウガ、紫芋、竹炭、グラノーラ入りなど、多彩。とても食べやすく、色々、次々に食べてみたくなります。
2018.03.25(日)
文・撮影=そおだよおこ