vol.25 軽井沢(1)
まさに軽井沢スタイルの
ヌーベルキュイジーヌ
軽井沢のフレンチが変わってきた。有名な「エルミタージュ・タムラ」が第一世代とするならば、2011年を機に次々と若いシェフが店を出すようになる。
軽井沢をはじめとした近隣の生産者との連携もあり、今までの「東京で食べるようなフレンチを軽井沢で食べる」というスタイルから、「軽井沢でしか食べることのできないフランス料理」と、スタイルが変わってきた。
今号から数回に分けて、そんな軽井沢スタイルのヌーベルキュイジーヌを出す店を紹介したいと思う。
今回は、南原にある「無彩庵 池田」である。
当初は 「エルミタージュ・タムラ」のカジュアル版の2号店だったが、出身の池田昌章シェフが譲り受け、オーナーシェフとなった。
「山菜や川魚が好きで、軽井沢で働こうと思いました」という池田シェフの作る料理は、地の食材への愛が溢れている。それでは、初夏のコースをご紹介しよう。
アミューズは、エレガントな玉ねぎの甘みの中で、微かにわさびが香り、舌を刺して食欲を刺激する、「依田さんの玉ねぎと安曇野わさびのムース」。
続いて、ワラビのほろ苦み、アサリのうまみ、サフラン風味のマヨネーズのコク、からすみの塩気が見事に調和した、「ワラビとアサリの出汁のジュレ寄せ カラスミ」。
魚の前菜は、「飯田・天竜鮎のパテ 鮎出汁と葛 きゅうりとエストラゴンビネガー」。ほろ苦いパテを鮎の出汁で溶いた葛で包んでいる。それをキュウリのソースにつければ溌剌たる香りが抜け、清流の中で泳いでいるかのような気分になれる一皿である。
肉の前菜は、「伊奈・宮田村仔猪のパテとブラックチェリー。フォアグラと信州地鶏べにしぐれのプレッセ ルバーブ 白バルサミコ バニラ」。練り肉の旨みに富んだうり坊のパテと、香りの良いフォアグラと鶏肉の冷前菜である。白バルサミコを煮詰めてバニラを加えたソースが素敵である。
2017.07.13(木)
文・撮影=マッキー牧元