放送中の大河ドラマ「おんな城主 直虎」ゆかりの地としても注目を浴びている静岡県静岡市は、旅先としても5月下旬~6月の今が旬。摘みたての新茶がでまわり、駿河湾でしか捕れない桜海老の春漁のまっただ中。人混みも少なく気候もよく、富士山の絶景スポットへの散策もベストシーズン。東京からたったの約1時間! 新緑の爽快な風にのって名産が一気に芽吹く、初夏の静岡市へでかけてみませんか。
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新茶のシーズンを迎える
静岡市でするべき3つのこと
八十八夜も過ぎ、本格的な新茶のシーズンを迎える静岡市。新緑と茶畑のまばゆい絶景を眺め、茶農家で茶摘み体験、お茶専門店で自分好みのお茶をハントしたら、新茶&新茶スイーツでほっと一息。日本最大の「お茶の集積地」であるこの土地ならではの、お茶とのふれ合いを通して、その魅力を五感で感じて。
#01 茶農家で“お茶体験”
栃沢「山水園」
新緑まばゆいこの季節。せっかくですもの、市街地からちょっとだけ足を延ばして、お茶づくりの人や文化にふれる、とっておきの“お茶体験”をしてみませんか。今回紹介する「山水園」では茶摘み体験のほか、摘みたてのお茶を味わう茶席体験ができるとあって大人気。
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ガイドをしてくれるのは、栃沢で品質の高いお茶をつくり続ける内野清己(うちの・きよみ)さん。まずは、手間暇かけて丁寧に育てられた手摘み用の茶畑にて、実際に自分の手で茶葉を摘む体験からスタート。
手摘みの茶葉は山水園でも1割ほどで、市場には出回らず直販のみで手に入る貴重なもの。その手摘みの新茶をのちの茶席で飲めるとあって、それだけでも足を運ぶ価値がある。
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「お茶文化を知ってもらいたい。それ以上に、お茶を淹れることを日常的に楽しむきっかけづくりをしたい」と、自宅を開放し茶席を設けるようになったという清巳さん。
昔ながらの、風情漂う農家の縁側や座敷でいただくお茶はとっておきの味わい。お茶のいろはや文化・歴史、豆知識を、お話上手な清己さんから聞けるのもここを訪れる楽しみのひとつ。この日は、新茶を4煎目まで淹れて味の変化を楽しんだあとに、極上のお茶漬けが登場した。
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煎茶の世界が面白いのは、淹れるごとに変わる茶の表情。1煎目は旨みと甘み、2煎目は渋み。茶菓子の甘さとのハーモニーも楽しんだら、3煎目は苦み、4煎目は淡さを堪能する。この「甘・渋・苦・淡(かん・じゅう・く・たん)」を丁寧に堪能することが、味覚だけはなく眠っていた感性を刺激するかのよう。
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4煎目を味わったあとは、お塩をかけて茶葉をいただき、最後にお茶漬けを。ごはんにお茶をかけて、お茶の葉をトッピングしただけだが、シンプルでおいしい。
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驚くべきことに、これだけ充実したお茶体験が、なんと、清己さんのご厚意によって無料で行われている。それは何よりもお茶の素晴らしさと大切さを次世代に残したいという清己さんの思いから。第一線で活躍しながら、自由な発想でお茶の持つ豊かな魅力をわかりやすくユーモラスに教えてくれる。
自然の恵みに感謝しつつ、一淹ごとにじっくりお茶と向き合い、お茶を嗜むゆとり――その時間こそが忘れていたお茶の魅力であり、豊かな暮らしとは何かを再発見できるきっかけとなるかもしれない。
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山水園(さんすいえん)
所在地 静岡市葵区栃沢421
電話番号 054-291-2219
受入時期 6月~4月/曜日不問
受入規模 1~20名 ※要予約
http://sansuienkiyomi.blog136.fc2.com/
※お茶体験の内容は時期により異なります。必ず予約の上、ご参加ください。
2017.05.20(土)
文=吉村セイラ
撮影=佐藤 亘