英国唯一の茶園を持つ
トレゴスナン・エステート

 日本も英国もお茶を飲む文化がしっかりと根付いている国ですが、国内でお茶を生産できる日本と異なり、英国で飲まれている紅茶の大半は旧植民地であるインドやスリランカなどで生産されています。ところが、太陽の光が乏しい英国でお茶の木は育たない、という従来の常識をくつがえし、英国初の本格茶園を展開しているのがコーンウォールにあるトレゴスナン・エステートです。

企画段階から茶樹栽培のプロジェクトを牽引するジョナサン・ジョーンズさん。

 貴族の荘園であるトレゴスナンは、14世紀から現在に至るまでボスコーエン一族の住居であり、一族が集めてきた英国では珍しい植物を多数擁する約40ヘクタールに及ぶガーデンと、60ヘクタールもの茶園のほか、森や農場など広大な土地を有しています。

荘園時代、1334年当時の面影をそのままとどめたドア。この向こうに茶園があります。

 「英国産の紅茶をつくる」という前代未聞の一大プロジェクトを企画段階から率いてきたのが、現在はトレゴスナンのトレーディング部門のマネージング・ディレクターを務めるジョナサン・ジョーンズさんです。もともと園芸学と植物学が専門のジョナサンさんは、園芸の勉強をするために日本に住んでいたこともあります。

左:茶園に青々と茂るお茶の葉。
右:良質な紅茶となる一芯二葉の部分。先端の若い葉は渋みが少なく甘みが強いといわれています。

 「そもそも、お茶の樹はカメリア(椿)の一種で、トレゴスナンには200年前にはすでにカメリアがあった、という記録も残っています。しかも調査の結果、トレゴスナンはインドのダージリン地方と地形、天候、土壌など、共通点が多いこともわかったのです」とジョナサンさん。

 このプロジェクトの話が1997年に持ち上がり、奨学金を得てインドや中国など世界中の茶園を訪れてお茶の勉強をしたのだと言います。

紅茶の箱詰め作業が行われている部屋。

 2002年にわずか4000平米以下からスタートを切った茶園は試行錯誤を繰り返しながらも、暖流であるガルフストリームの恩恵から生まれた、微気候と呼ばれるトレゴスナンの局地的な気候に恵まれて、2005年以来紅茶の販売へと発展しました。現在では茶園の面積も100倍の40ヘクタールへと広がり、ロンドンのデパートなどでもトレゴスナンの紅茶を見かけます。

 「英国のコーヒーブームはつづいていますが、紅茶はもっと永続的なもの。700年近い歴史をもつトレゴスナンだけに、我々のプロジェクトもこの先の700年を見据えています。700年経ってなにもかもが変わってしまっても、おそらく人は紅茶を飲みつづけていると思うんですね」とジョナサンさんの目は遥か未来に向いています。

2017.04.30(日)
文・撮影=安田和代