1000年の歴史をほこる古都へ

 チャンアンのもうひとつの魅力としては、古の時代から続く人々の営みも見逃せません。たとえば同地域には約3万年前から人類が住んでいたと言われており、現在調査中の一部の遺跡からは、約1万年前の人骨が発掘されたこともあります。

祠に鎮座する丁朝の王、ディン・ティエン・ホアン像。

 また、チャンアンを訪れた際にぜひ立ち寄ってほしいのが、ボート乗り場から北へ車で5分ほどの場所にある古都ホアルーです。ここはハノイへの遷都が行われた李(リー)朝の前、10世紀後半に栄えた丁(ディン)朝と前黎(レー)朝の都で、当時の王を祀る祠には、今も多くの人々が参拝に訪れています。

切り立った岩場が連なる同地ではヤギ料理が名物。

 ベトナムといえば、けたたましくクラクションを鳴らすバイクの洪水などのイメージがありますが、この地域はそんな都会の風景とはまったく異なる姿を見せてくれます。緑豊かな大地、山々と川に抱かれ生活を送る、穏やかな笑顔がまぶしい人々……。

 とはいえ、登録からまだ間もないこともあり、同地を訪れる観光客はまだ、それほど多くはありません。雄大な自然に囲まれながら手漕ぎボートで静寂の地を巡る、そんな旅を楽しめるのは、もしかすると今のうちだけかもしれません。

観光の拠点となるニンビンの街。市場もどこかゆったりとした雰囲気。

杉田憲昭(すぎたのりあき)
ベトナム・ホーチミン市在住のエディター&フォトグラファー。広告代理店・編集プロダクション「GRAFICA」代表。日本で編集者として活躍後、渡越。在ベトナムは10年を超える。女性誌や旅行誌、機内誌などの取材・撮影・コーディネートを通じ、幅広くベトナム情報を発信中。

Column

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世界の12都市から、何が旬で何が起きているかをリポートするこのコーナー。
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文・撮影=杉田憲昭