このおいしそうな炊き立て小矢部産米は、小矢部の人気店「煮込みうどん田舎」で食べることができる。

 つやつやに光る炊き立てご飯を口にするのは、日本人ならではの幸せを感じる瞬間。ひと粒ひと粒がぷるんと際立つ、見るからにおいしそうなお米は、富山県小矢部(おやべ)市で穫れたもの。かむほどにもっちりとしてほのかな甘みが感じられ、おかずなしでもどんどん箸が進んでしまう。いったいなぜ、小矢部のお米はおいしいの? その秘密に迫ってみよう。

水と気候に恵まれた
豊かな自然の中で育つ小矢部産米

実りの時期には田んぼが一面の黄金色に染まってなんとも美しい景色に。

 富山県の西部に位置する小矢部市は、富山市や金沢市から近く、江戸時代から宿場町として栄えた歴史を持つ。立山連峰を遠くに望み、市内には小矢部川がゆったりと流れるロケーション。きれいな空気とおいしい水、そしてくっきりした四季のおかげで、米や野菜がおいしく育ち、養鶏や養豚もさかん。おいしいものがたくさん生まれる条件が揃っているのだ。

 けれど、単に自然に恵まれているだけではない。そこには、さらにおいしいものを作りたい、多くの人に食べてもらいたいという熱い思いを抱いて、新しいチャレンジを続ける人たちの存在がある。そのひとつが、小矢部市独自の循環農法を進めている人たちだ。

おいしいお米が生まれる
小矢部独自の循環農法って?

米を飼料にした鶏の糞を堆肥にして米を作るという循環農法。

 小矢部の農産物をより質の高いものにしたいという熱い思いから、独自の循環農法を行っている生産者グループがある。それが、4戸の農家で立ち上げた「ぐるる富山」。メンバーはそれぞれ農業を営みながら、このプロジェクトを推進している。

 小矢部の循環農法は、米と、県内80%のシェアを持つ鶏卵が中心になっている。小矢部産米を鶏の飼料に使い、それを食べた鶏の糞で堆肥を作る。その堆肥で米や野菜を作り、その米がまた飼料になるという具合だ。

熟成させた堆肥をバックに、「ぐるるパワー」と農産物を手にする「ぐるる富山」のメンバー。左から:飛渡さん、宇川さん、大西さん、高田さん。「ぐるる富山」の詳しい活動内容についてはコチラ

 6カ月間、自然に発酵させて作る完全完熟の堆肥「ぐるるパワー」は、匂いも少なく、さらさらとして上質。「この堆肥を使えば、お米も野菜も必ずおいしくなる」という熱意が伝わって、最近ではこの堆肥を使う農家がかなり増えてきた。もちろん、お米の評価も年々上がっている。

 「本当の本物を作ろうというのが私たちの思い。ぐるる富山が作るものは本物、小矢部産は本物と認めてもらえるようになったら嬉しい」という彼らが近々売り出す新製品は、卵を高濃度で使った採算度外視の贅沢バウムクーヘン。循環農法を軸に、小矢部ならではのおいしい“本物”をこれからも生み出していくというから楽しみだ。

2017.03.31(金)
文=嵯峨崎文香
撮影=佐藤亘
写真=小矢部市観光協会