BLマンガ基礎講座

BLマンガ基礎講座

美しくも満身創痍な問題作BL
梶本レイカの『コオリオニ』

【BLは問題作を生む。】

 BLは、男同士の恋というたったひとつの縛りがクリアできていれば、どんな設定もやぶさかじゃない」と先月書いた文言を再度繰り返します。ハシを通っちゃいけないなら真ん中通ってハシを渡ります……一休さんのトンチのようにBLマンガには稀に「究極の恋愛を描くためですから、ものすごく極端な設定や破天荒な性格の主人公でもアリですよね?」とばかりに、驚嘆に値する角度からジャンルの縛りの意表を突く作家がいる。そして創造力の限りを尽くした美しくも満身創痍な問題作が生まれます。いっそ問題作からBLに入門しませんか? 一種のショック療法ですがドンズバではまる可能性もあると思います。

犯罪と裏切りに彩られた
男たちの愛と暴力の鬼ごっこ

 独特の作風で知るひとぞ知る梶本レイカさんの『コオリオニ』は、北海道警察の違法銃器摘発に絡む不正事件を題材に描いた作品です。90年代に世間を騒然とさせた実際の大事件にBL要素を見いだし、上下巻の大作にする妄想力が凄まじい。警察の業績を上げるためには不正も厭わない悪徳刑事の鬼戸が出会ったのは、美しい黒社会の住人・八敷だった。

 鬼戸は地位もあり頭の切れる八敷を自分のエス(情報提供者)にと口説く。しかし、八敷は想像を絶する純粋悪そのものであった。鬼戸は銃器摘発の成績を上げるために柏組の武器庫に目を付け、八敷に潜入捜査を依頼する。八敷は麻薬の密輸入の目こぼしを条件にスパイを引き受けるが事態は破滅へと転がり出す。本作の刊行は2016年2月、奇しくも6月に封切られた綾野剛主演の映画『日本で一番悪い奴ら』も同じ事件が題材でした。両方鑑賞して考察を深めるのもまた一興です。

『コオリオニ』(上下巻) 梶本レイカ

1990年代、北海道で全国を震撼させる警察の不祥事が幕を開ける。違法銃器を摘発する側の警察が点数稼ぎにヤクザと手を組むというデキレースが横行。事件の中心人物ふたりを主人公に欲望の果てにたどり着く景色を描く。ノワールBLの大作。
ふゅーじょんぷろだくと 各675円
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福田里香 (ふくだりか)
お菓子研究家。CREAで「R先生のおやつ」も連載中。『まんがキッチン おかわり』(太田出版)と文庫版『まんがキッチン』(文春文庫)が好評発売中。

<この記事の掲載号>

CREA 2016年11月号

一杯がもたらす最高の癒し
喫茶店とコーヒーがそこにある幸せ

定価780円

2016.11.05(土)

文=福田里香

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