男と女のマンガ道

男と女のマンガ道

母であることの幸福と不遇
そして母の偉大さを描いたマンガ

今月のテーマ「まぶたの母」

【MAN】
親の心を子が知るとき、気づく
追憶の母も目の前の母も偉大だ

 「親の意見と茄子の花は千に一つの徒もない」と言われるが、18歳の若き良太にとっては母・亘江(のぶえ)の説教は耳が痛い。口を開けば叱られるので、逆に興味を覚えて尋ねてみれば、母には人生がひっくり返るような転機があったのだ。

 母と息子それぞれが18歳だった頃を重ね合わせ、子どもから見た“母の生き方”を1963年の下関と1998年の川崎、2つの時空で描く。亘江は地元では名の知られたスケバンで、傲慢な父に歯向かって荒れる。境遇そのものを憎んでいたが、それを諭してくれたのが、旅館の賢女将・亘江の母だった。

 実際、母の教えは偉人の箴言のように貴い財産。そのことに亘江が気づいたのは、郷里を離れ、ときおり母の姿が脳裏に浮かぶようになってからだ。

 面白いことに亘江は良太を、自分が母から教わった言葉で叱る。思い出とともに身体に染みこんでいた母からの大いなるエールは、こうして受け継がれていくのだな。

『HaHa[はは]』(全1巻) 押切蓮介

著者の母と著者自身をモデルにしたという本書。旅館の女将として采配をとっていた母の母、つまり著者の祖母のケジメのある生き方も、いまでは下ネタ好きらしい母の胆力を感じる若き日のエピソードも、清々しくて心を打たれる。胸に刻みたくなる名言もてんこ盛り。
講談社 680円
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<次のページ> それを知っても、子は母を想う

2016.04.05(火)

文=三浦天紗子

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