岡崎城下家康公夏まつり花火大会(愛知県)

車火(くるまび):仕掛け花火の「車火」は、車輪に火薬筒をとりつけ、火薬の噴出による推進力を利用して車輪を回転さ せる花火です。「風車(かざぐるま)」などともよばれています。花火の玉名は、その地方によって名前が違うこともあります。花火は昔から火薬を使うため水辺で行うことの方が多いといえます。

 三河は、「日本の花火の発祥地」といわれていて、徳川家康の生誕地です。

 江戸時代から継承された三河花火のひとつが菅生神社の祭礼奉納花火でした。その行事を受け継ぎ、花火大会として開催したのが1948(昭和23)年からです。

 戦国時代の砲術名人を召し抱えた家康は、鉄砲組を三河出身者でかためました。江戸時代の天下太平の世になると、鉄砲組は活躍の場がなくなり、この三河へと帰ってきました。さらに、火薬の調合や貯蔵をこの地方には許したという政策もあり、砲術が三河に根づき、これがのちに三河花火に発展していったというのが三河花火史の通説です。

 愛知県岡崎市の花火大会のプログラムには、やはり「家元」ですから花火の名前を見てもここが発祥地だと自負しているようで趣き深いものがあります。

 例えばプログラムに、「銀滝」と書かれ、「川に沿って300メートルにわたり銀色に流れる火の粉が大きな滝のように涼やかに美しく降り注ぎます」と書いてあります。

 全国何処に行っても、「300メートルのナイアガラの花火です」と名付けられるところです。この花火は、「仕掛花火」の「張物(はりもの)」で、昔は「縄物(なわもの)」とか「綱物(つなもの)」などともよばれ、古典的な仕掛花火のひとつです。落下する火の粉で「滝」の形を作ったものを「ナイアガラ」と呼ばずに「銀滝」と名付けるところが、「日本の花火の元祖」の矜持でしょう。メロディースターマイン、金魚花火、火車、大のしなど、バラエティに富んだ花火が圧巻です。

大会概要
【大会名称】  岡崎城下家康公夏まつり花火大会
【開催場所】 岡崎市康生町 乙川河畔、矢作川河畔
【観覧席】 有料観覧席あり(要予約)
【アクセス】 名鉄名古屋本線「東岡崎駅」「岡崎公園前駅」または愛知環状鉄道「中岡崎駅」下車徒歩約10分
【URL】 http://okazaki-kanko.jp/
【問い合わせ】 愛知県岡崎市観光協会 TEL:0564-23-6217

泉谷玄作(いずみや げんさく)
写真家。1959年 秋田県に生まれる。花火の撮影をライフワークとする。現代美術作家、蔡國強(Cai Guo-Qiang)氏の依頼で、2002年MoMA(ニューヨーク近代美術館)主催の「動く虹」の花火や、2003年ニューヨークセントラルパーク150周年記念の「空の光輪」の花火などを撮影。著書に、『心の惑星-光の国の物語』(クレオ)、『日本列島 四季の花火百華』(日本カメラ社)、『静岡県ふくろい遠州の花火』(日本カメラ社)、『花火の図鑑』(ポプラ社)、『花火の大図鑑』日本煙火協会/監修 (PHP研究所)、『日本の花火はなぜ世界一なのか?』(講談社+α新書)など、花火に関するもの多数。日本写真家協会会員。

2014.07.09(水)
文・撮影=泉谷玄作