出産・育児による休業を経て1年9ヶ月ぶりに俳優活動を再開し、復帰作の主演映画『ミッシング』が公開となる石原さとみさん。本作では失踪した幼い娘を探し続ける母親・沙織里、という難役を演じている。
これまで演じたことのない役、出演したことのないジャンルであるこの作品について、強い思い入れがあると石原さんは言う。ひとつの重要な転機となったと振り返るこの映画について、そして自身のこれからについて話を聞いた。
𠮷田作品の世界に入りたい! 自分を変えてほしいと思った
――石原さんは、𠮷田監督と「どうしても一緒に仕事がしたいです!」と自ら監督に出演を直談判されたそうですね。𠮷田監督の作品を好きになったきっかけを教えてください。
最初に『さんかく』を見て、衝撃を受けました。『ヒメアノ~ル』でも森田剛さんのパブリックイメージとの違いがあまりにも強烈で(劇中でシリアルキラーを演じている)。それを見て「自分もこの世界に入りたい!」と思ったんです。主人公の軸だけじゃなく、作品内の登場人物たちもそれぞれの感情で動いていて、「一人だけで世界が回ってるわけじゃない」というのがよくわかる。群像劇というか、登場人物の背景がしっかりと描かれているので、作品に厚みがあるんですよね。
――𠮷田監督と最初に会って出演したいと自ら伝えた時に、手応えはあったのでしょうか。
それが、断られたんですよ。「あなたと仕事がしたい、今までにない作品で私を変えてほしいんです」とお願いしたら、「石原さんはメジャー過ぎてイメージが湧かない。脚本が浮かばないな」と。「それでもいいので」と連絡先を交換したのですが、それからまったく音沙汰がなくて。突然「脚本書きました」とメッセージがきた時には、飛び跳ねましたね。もう叫びたいほどに嬉しくて。絶対やりたいと思いました。ただ、どう演じればいいのかはまったくわからなくて、同時にとても怖くもなりました。
2024.05.16(木)
文=あつた美希
写真=榎本麻美