「アルバのトリュフ」を世界に売り出した仕掛け人とは

お土産選びに適切なアドバイスをくれる店長のキアラさん

 さて、白トリュフと言えば誰もがピエモンテ州のアルバを真っ先に思い浮かべる今日だが、実はその背景には一人の仕掛人が存在する。周辺一帯で採れる白トリュフに「アルバのトリュフ」というネーミングを与え、カルト的食材として位置づけ、世界レベルで売り出そうと考えたのは、当時、ホテルマンだったジャコモ・モッラである (彼がオープンしたトリュフ専門店「タルトゥーフィ・モッラ」は現在もアルバで営業を続けている)。

白トリュフには手が出なくてもトリュフの香りを楽しめる食材なら手が届く

 マーケティング戦略という概念など浸透していなかった当時、地域の特産物を売りに観光客を呼び込めないだろうか、という斬新な発想から、バローロやバルバレスコなど、ピエモンテを代表する赤ワインが主役だった見本市の片隅でジャコモ・モッラが初めて白トリュフを出展したのは1929年だった。そして、その数年後、ワインは脇役となり、白トリュフは見事に見本市の主役へと躍り出る。

 だが、アルバの白トリュフが世界的にその名を馳せるようになるには、それからさらに10年以上の歳月を要する。ジャコモ・モッラが考えた次の戦略は、その年に採れた最高級の白トリュフをVIPにプレゼントすることだった。1949年のリタ・ヘイワースを皮切りに、トゥルーマン(1951年)、チャーチル(1953年)、マリリン・モンロー(1954年)、アイゼンハワー(1959年)、パウロ6世(1965年)と続き、その後もソフィア・ローレンやヒッチコック、レーガン、ゴルバチョフ、パヴァロッティと、VIPへのプレゼントは引き継がれていった。

トリノからアルバまでは電車またはバスでで1時間半ほど。小さな街なので1日で十分見てまわることができる

 そして、今年で83回目を迎えた白トリュフ見本市。ピエモンテの小さな街アルバは、毎年、秋の訪れとともに極上の白トリュフを求め、世界中の人々が集う国際グルメ都市へと成長したのである。

タルトゥーフィ・モッラ (Tartufi Morra)
所在地 Piazza E. Pertinace,3 Alba Tel.0173.364271
URL www.tartufimorra.com/web

第83回 アルバ白トリュフ国際見本市
(Fiera Internazionale del Tartufo Bianco d’Alba)
開催期間 2013年10/12~11/17
URL www.fieradeltartufo.org/Sezione.jsp?idSezione=458#

村本幸枝 (むらもとゆきえ)
イタリアでは撮影コーディネートを、日本では東京・中央区で日伊文化交流サロン「アッティコ」を主宰。在伊歴20年ちょっと。現在、年の半分ずつをイタリアと日本で過ごしている

日伊文化交流サロン「アッティコ」:www.attico.net

Column

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text&photographs:Yukie Muramoto