パリはそこにいるだけで幸せが込み上げてくる街だ。その幸福感をより高揚させるためにも、ホテルはしっかり選びたい。

 間違いなしの至福の2軒をお届けします。今回は「ル・ブリストル・パリ」です。

» 第1回「ル・ロワイヤル・モンソー ラッフルズ・パリ」

ル・ブリストル・パリ

部屋のドアを開けた瞬間、その可憐さにワッと心が躍るハネムーンスイートは177平方メートルもある。白を基調にしたインテリアに、赤のアクセントが実にフレンチだ。8888ユーロ

 パリにホテルは数多くあれども、これほど気持ちよく滞在できるホテルはまたとない。物腰柔らかく気配りこまやか、サービスの練度は他の追随を許さない。なにこの親切さ、ここって本当にフランス? と自問する。それは何度でも還ってきたくなる魔力、とすら形容したいほどだ。

上のリビングに隣接するベッドルームもシンプルシック

 パリ社交界の中心を成していた貴族の邸宅がホテルとなり、創業を始めたのが1925年。エントランスホールには、年代物のタピスリー、ルイ15世様式やルイ16世様式の家具がさりげなく配置されている。上質な気品が漂うのはそのせいか。

 ホテルという存在が歴史の上でアグラをかいてしまったら、古ぼけたただの大箱に堕してしまう。佇まいを崩すことなく機能をアップデートすることは難しいが、ル・ブリストルはそれを成功させている。客室の大改装はもちろんのこと、屋上階にあるパリを一望できるプールや、テラス付きのスパの増設がそれだ。

左:子ども同伴でも、施術後はゆっくりできる。キッズルームが隣接とは、嬉しい心配り
右:2011年オープンの「スパ・ル・ブリストル・バイ・ラ・プレリー」は、スイスのラ・プレリーとのコラボによって生まれた

 2011年5月、パリで最初に正式なホテル格付けの最上位「パラス」の認定を受けた後も、改革の手を休めることはしない。最旬の話題は、オープンしたばかりのバールームである。18世紀のタピスリーと大スクリーンに映し出されたパリの光景が混在する大人の空間だ。DJが入る日もあるというから、なんとも欲張りなことである。

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photographs:Yuji Ono
text:CREA Traveller