奉仕の真髄に触れる悦び　
パリの頂点を極めたホテル

1軒のホテルが4ツ星を有するのはフランスではここだけ

左：“ヒラメのロースト”も素晴らしいの一言。ジャストに火入れした切り身に、トリュフの野性味や牛の髄液のソースが絡む。フレション氏のソースの妙技に万歳！ 102ユーロ
右：傑作“ロスコスの桃色タマネギのカルボナーラ風”は、パスタのように細長く切ったタマネギがまるでカルボナーラ。ベーコンとジロール茸の香ばしいソースがたまらない。72ユーロ

 食の部門では、コンテンポラリーレストランがミシュラン1ツ星、ガストロノミーレストランが3ツ星。1軒のホテルが4ツ星を有するのはフランスではここだけだ。

 1ツ星「114フォーブル」は、見目麗しい若い男女がきびきびと働いて居心地がよい。場所柄、ビジネスランチが多いせいか、テーブルには小さなメモ帳と鉛筆が1席につき1セット置かれた配慮が心憎い。もちろん、シェフのエリック・デボルド氏が供する料理も手堅い美味しさ。

2011年10月に新装オープン。世界的インテリアデザイナーのピエール・イヴ・ロション氏とオーナーのマダム、マヤ・オテカー氏が内装を手がけた

 さて、「エピキュール」である。2009年に3ツ星を獲得して以来、そのレベルを堅持するばかりか進化しつづけ、いまフランスで最も勢いがあるという定評は微塵も揺るがない。とにかく一皿一皿が驚愕の美味しさ。フレション氏の食に懸ける情熱に感動すら覚える。フランス料理の頂点を味わいたいなら、迷わずこの店を予約すべきだろう。

 味だけではない。給仕からソムリエまで、一糸乱れぬ饗宴には驚くばかり。スタッフが甲斐甲斐しくフレンドリーに世話してくれるので、たとえ一人のディナーでも心配は無用。優れた3ツ星店はゲストを心底リラックスさせてくれるものなのである。

昨年9月にオープンした「ル・バー・デュ・ブリストル」は大人の空間。カウンター越しにいるのはヘッドバーマンのオーツ氏

photographs:Yuji Ono
text:CREA Traveller