週末に、心が洗われる別世界へ出かけてみるのはいかが。少し車を走らせれば、そこにはおもてなしの心に満ちた極上の宿が待っている。

 旅行作家の野添ちかこさんが、1泊2日の週末ラグジュアリー旅を体験。今回訪れたのは、栃木県・那須の自然豊かな高原に佇む「那須別邸 回」だ。

 フロントを通らずに客室でチェックインができ、夕食も、朝食もすべて客室で楽しめる。もちろん客室には温泉も引かれている。チェックインからチェックアウトまで優雅な空間でくつろぐことができる、アフターコロナ時代の理想の温泉宿の形がここにある。

“時代を牽引する人たち”も足繁く通う名宿

 都心部から東北自動車道を走ること約2時間、那須インターチェンジで降り、高原の風香る那須街道を走れば、今回の目的地まではもう少し。

 住所は「湯本」だが温泉街からは2キロメートルほど離れた立地で、那須高原へ向かう那須街道から1本入った場所に「那須別邸 回」はある。天皇ご一家が避暑のため訪れる那須御用邸からほど近く、静養の場としても由緒正しい静謐な森の中の、大正時代に開かれた「新那須温泉」と呼ばれるエリアに構える温泉宿だ。

 元・常陽銀行の保養所をリニューアルした建物で、開業からは14年。時を経て、宿として成熟した佇まいを見せている。

 「那須別邸 回」の客室数は8室と離れ1室のわずか9室。それぞれの部屋ごとに間取りもインテリアも異なり、いずれもゆったりとした造りで居心地がいい。

 ダイニングにある革張りのソファからは、窓外に広がる鬱蒼とした木々が眺めることができる。間断のない野鳥のさえずりを聞いていると、リラックスモードは全開に。最高の休日を過ごせること間違いなし!

 ちなみに、ベッドルームには宮内庁御用達、国内の一流ホテルで採用されている日本産のベッドが置かれている。御用邸を意識してのことだろうか。

 各部屋に引かれている温泉は、御用邸と同じ「大丸源泉」で、那須八湯にも数えられる名泉だ。那須別邸の客室にはそれぞれ鍵の形や檜、大谷石など異なるタイプの浴槽がついていて、24時間好きな時間に湯浴みができる。早朝の入浴は、森の緑が目にやさしく、野鳥のさえずりが耳をくすぐり心地いい。

 もちろん、湯はすべて温泉かけ流し。無色透明の単純温泉だが、少し熱めなので水を入れてから入るとちょうどいい。今回宿泊した「其の四」は、寝湯の風呂も楽しめる。チェックイン後にさっそく寝湯に滑り込めば、首と頭に血流が巡り始める。

 ひたすら脱力する時間は、ストレス緩和と免疫力向上の良薬だ。時間を有効に使おうという忙しい経営者や有名人も多く泊まりにくるというのも頷ける。

文・写真=野添ちかこ