素っ裸の女の子たちが銃で撃たれまくる新作も公開

会田 誠 《滝の絵》
2007-10年 アクリル絵具、キャンバス  439×272cm
国立国際美術館蔵、大阪
Courtesy: Mizuma Art Gallery
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 待望の新作も「らしさ」全開だ。素っ裸の女の子たちが銃で撃たれまくっている《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》は、血の代わりに、苺や花、ダイヤモンドなど可愛らしいものが飛び散っている、幅17.5メートルもの大作絵画。残念ながらオープンまでに完成しなかったが、会期中、閉館後に通って夜間に制作を続けながら、仕上げていくという。

 また、六曲一隻の屏風形式で描いた新作が《電信柱、カラス、その他》だ。画面の下方は霧でよく見えないが、電信柱が斜めにかしいでいることから、人間社会になにか、ひどいことが起こっているとわかる。さらに目を凝らすと、カラスが人間の指や目玉をくわえていることにも気づくだろう。会田がこれまでも試みてきた、琳派の絵画や近代日本画など、先行する日本の絵画作品を引用、リミックスした作品であり、同時に昨年の東日本大震災を想起させる作品ともなっている。アイディアそのものは20年以上前から温めていたものだが、今回の個展のために制作を始めようとしていた矢先に震災があり、一時はお蔵入りも考えたという。

会田 誠 《一人デモマシーン(サラリーマン反対)》
2005年 布にインクジェットプリント  116.5×87.7cm
Courtesy: Mizuma Art Gallery

 美少女から水墨、震災から宗教対立まで、会田の作品世界は果てしなく広がっている。そうならざるを得ない理由は、美術と言うジャンルが、他のエンターテインメントに比べて、明らかに衰弱しているところにある。どんな姿勢、どんなコンセプトならそこが突破できるか、誰も正解を見出せていないからこそ、空振りを恐れず、今ある現代美術のシステムから外れた何かが生まれることを期待して、若手とのコラボレーションを含めて、多様なアプローチを試みずにはいられない、というのだ。

 さて、あなたが感じるのは嫌悪感か、反発か、それとも淡い共感か、熱狂か。覚悟を決めて足を運んで、確かめてみてほしい。

会田誠展:天才でごめんなさい
会場 森美術館
会期 2012年11月17日~2013年3月31日
休館日 会期中無休
開館時間 10:00~22:00(火曜日のみ17:00まで)
※ただし1/1(火・祝)は22:00まで。入館は閉館時間の30分前まで。
料金 一般1500円
問い合わせ先 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/index.html

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2012.12.15(土)