#180 Isola di Lampedusa
ランペドゥーサ島(イタリア)

 ランペドゥーサ島行きを決めた理由は、“フライングボート”。

 透明度が高い海にぷかりと浮かんだボートが、まるで宙に浮かんでいるように見える光景から名付けられました。

 ランペドゥーサ島はシチリア島の南沖のペラージェ諸島に属する、イタリア最南端の島。西にアフリカのチュニジア、東にマルタという位置に浮かんでいます。シチリア島までは約175キロ離れているのに対し、チュニジアまでは約113キロ。アフリカの方が近く、地質的にもアフリカに似た傾向があるそうです。

 お目当てのフライングボートが見られるのは、ランペドゥーサ島の南西部に隣接する小島・ラビット島(イソラ・ディ・コニッリ)。石灰質の土壌と、透明度の高さ、穏やかな海面、そして正午近くの太陽といった条件が揃わないと、あの絶景には出会えません。

 つまり、石灰質の土壌が蓄積して広がった真っ白な浅瀬に、正午近くのまっすぐな太陽光が差し込み、ボートの影を海底に落とす。すると透明度が高いため、海水の存在がないように見えるのです。海が濁っている、あるいは海面が荒れていると、影は海底まで届かず、船が飛んでいるようには見えません。

 ちなみに、ラビット島は大潮の干潮時に砂の道ができてランペドゥーサ島とつながることがあり、島名はそのことに由来しているとか。かつて地図にアラビア語で“つながる”を意味する“rabit”と書かれていたのを誤植と思ったのか、のちの地図で“rabbit(ウサギ)”と修正されたのがそのまま島名になったそう。また、地峡部分を渡って島に移ったウサギたちが取り残され、大量繁殖したのちに絶滅したという説もあります。

 さて、ランペドゥーサ島の空港に到着した時から強風が吹き、嫌な予感がしていました。

 ホテルのスタッフによると、やはり強風のためにラビット島へ渡るボートは出ないとのこと。

「昨日から風が吹き出したのだけど、落ち着くまではあと2~3日かかるわね」。

 宿泊は1泊2日。滞在中にフライングボートを見るのは難しそうです。強風ながらも空は晴れているし、島内を観光することにしました。

2019.09.07(土)
文・撮影=古関千恵子