世界を旅しながらノマド生活を送る、アーティストの與真司郎さん。実は、英語に自信が持てなかったという過去もあるそう。そんな與さんが語る、“言葉”と“旅”がくれた気づきとは――。

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 海外へ旅するとなると、英語が話せないことがどうしても気になってしまうもの。「通じなかったらどうしよう」「空港で迷ったら?」「レストランで注文できなかったら?」。僕もかつてはそう思っていた。でも今なら、「英語が話せなくても、旅はできる」って言える。

 もちろん最初からそうだったわけじゃない。留学を決意してロサンゼルスへ渡ったとき、僕の英語は本当に初歩の初歩。まさに“話せない人”だった。ほとんど会話ができない。ノリについていけない。自分にまったく自信がない。友だちをつくろうとしてもうまくいかず、やっと少し仲良くなれたと思っても、仕事で日本に戻ったりすると、そのまま連絡が途絶えてしまう。思い返せば、自分の語学力が不安で、その様子から相手も距離を取っていたのかもしれない。

英語を学び始めた“切実な理由”

 でもその後、僕の“英語”に対する感覚は大きく変わっていった。きっかけは、旅。ドイツ、タイ、イタリア、スペイン……いろんな国の人たちと出会い、いろんな英語に触れてきた。彼らの話す英語には、それぞれのアクセントや言い回しの“クセ”があった。でも、それがかえって魅力的に感じられた。伝えたい気持ちと、それを表現しようとする姿勢があれば、英語として「正しい」かどうかなんて、たいして重要じゃない。発音が変でも、文法がぐちゃぐちゃでも、誰も笑わない。むしろ、自信を持って話している姿のほうが、ずっとかっこよく見える。

 アメリカに10年住んでいた僕の英語は、いわゆる日本語訛りのアメリカンアクセント。イギリスに行くと、「アメリカ英語かよ!」と冗談交じりに言われたりもする。でも、それも自分の歴史。今はかえって、それを誇りに思っている。アクセントや間違いは、コンプレックスではないから。それは自分の個性であり、アイデンティティなのだと、今でははっきり思う。

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