初主演作を携えて歩いた、グリーンカーペットの想い出

――初主演作『カルテット!』では、300人の候補者のなかからオーディションで選ばれたそうですが、そのときの気持ちはどうでしたか? 

  オーディションは演技テストだけだったんですが、僕は音符も読めないし、リズムを取ることもヘタなんです。音楽に接したのも、学校の授業でくらいしかなかったですし、主役に選ばれたことはうれしいけれど、僕に主演が務まるのかなという、不安の部分が大きかったと思います。だから、撮影が始まってからも最初はずっと緊張していて、周りのスタッフさんから“カチコチくん”と呼ばれていました(苦笑)。でも、撮影の合間に共演者やスタッフさんと一緒にお話ししたりすることで、少しずつ気持ちがやわらいでいきました。あと、現場にワンちゃんがいたので一緒に遊んだのが楽しかったです。

――撮影3カ月前から続けられた、ヴァイオリンの特訓はいかがでしたか? 

 最初はまったく弾けなくて悔しかったですし、先生も女性の方だったんですが、厳しかったですね。だから、学校が終わってから1日に3~4時間、1週間に4日ぐらい通いながら、指で覚えていきました。でも、撮影の初日から、ヴァイオリンを弾くシーンがあったんです。ただでさえカチコチに緊張してましたからうまく弾けなくて、終了時間が5時間ぐらい押して、周りの方に迷惑をかけてしまいました。それで、こんなことはイヤだと思い、もっと一生懸命練習して、それまではできなかった「チャルダッシュ」(モンティ作曲)も弾けるようになったんです。後から監督さんに聞いたのですが、最初からわざとハードルを高くして、僕をビビらすのが狙いだったようです(笑)。

――完成した作品を見た感想、それから出品された東京国際映画祭でグリーンカーペットを歩かれた感想などを教えてください。

 いちばん目がいったのは、自分がヴァイオリンを弾いている姿ですね。映画の中で僕はヴァイオリンの先生をちょっと好きという設定なんですが、そのあたりの演技が難しかったです。だから、自分の演技は80点ぐらい。もうちょっと頑張らなきゃいけない、と思いました。グリーンカーペットは、とても多くのお客さんがいらっしゃったので、緊張しすぎて、胃がキリキリして、気持ち悪くなりました。周りには、すごい方ばかり歩かれていて、自分は場違いなところにいるな、と恥ずかしかったです。この映画を通じて、いろんな方にクラシック音楽に触れてもらって、好きになってもらいたいです。僕もちゃんと聴いたのは初めてだったんですが、この映画に出させていただいたことで好きになりました。特にパイプオルガンの音が好きなので、バッハの曲が好きです。

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2011.12.22(木)
text:Hibiki Kurei
photographs:Asami Enomoto
hair&make-up:Takumi Saito(LAULEA)