頭上すれすれを飛んでいく迫力のファルコンショー

4羽の隼が目隠しされてスタンバイしていた。白い服を着ているのは鷹匠のおふたり。

 翌朝は、夜明け前に起きて、まだ薄暗いロビー横のラウンジに集合。ナミビアと同様、砂漠の朝は早いのだ。朝のアクティビティに参加するゲストが集まっていた。砂漠でのアクティビティは灼熱の日中を避け、早朝と夕方に催行される。私が参加するのは、鷹匠によるファルコンショー。ブラジルから来たというカップルとともに、アクティビティガイドの方が運転する四輪駆動車で砂漠へと向かう。

 リゾートから15分ほど走ると、小高い丘の上に白い民族衣装を着たふたりの鷹匠の姿が見えてきた。車を降りると4羽の隼が小さなポールの上に留まっているのが見えた。隼は鷹の一種だ。彼らの前に用意されたマットの上に座ると、鷹匠のアマンさんがアラビアコーヒーを淹れてくれた。

青い輪には飼い主の携帯電話番号が、赤い輪には隼のパスポート番号が刻まれている。

 ガイドさんによると鷹は、時速240キロメートルで飛ぶことができ、急降下するときには時速340キロメートルほどの速さになり、19キロメートル先の新聞を読むことができる視力をもつのだとか。びっくり!

 足に付けられたふたつの輪は、ひとつは飼い主の携帯電話の番号で、もうひとつは、なんとパスポート番号! 国境を越えて飛んで行ってしまったときに必要なのだとか。さらに、ドバイのシェイク(首長)の鷹は、2,700万円近くするのだという話に、またまたびっくり!

ポールに固定されていたひもが解かれ、目隠しが外され、ショーが始まる。

 そんな話を聴いているうちに、ショーの準備が整った。小さな帽子のようなものを被せられていた隼たちの目隠しが外された。鷹匠のアジスさんが、ひもの先に付いた疑似餌を振り回す。疑似餌をめがけて隼が飛んでくると、素早くかわす。すると隼はそのまま飛び去り再び旋回して戻ってくる。これを何度か繰り返すのだ。

疑似餌を巧みに操って隼を羽ばたかせる鷹匠のアマンさん。

 私の頭上をかすめて飛んでいったときには、まるでエンジン音のような「ザッザッザッ!」という音が響く。なかには、途中で砂丘の上でひと休みしてしまって、アジスさんが呼んでもなかなか帰ってこない子も(笑)。まだ若い隼なのだとか。

左:まっすぐ見つめられるとちょっぴり怖い。いやほんと、近すぎるってば! 腕を限界まで伸ばしてこの距離だもの。
右:鷹匠のアマンさん、よく見るとかなりのイケメン! 隼を持つ姿も私のへっぴり腰とは大違い(笑)。

 最後は、プチ鷹匠体験。アマンさんが腕の上に隼を乗せてくれた。「いやいや、目隠ししたままでいいんですけど」という抵抗むなしく、鋭い目つきの彼女(この日は全員メスだった)が私の腕に。熱い眼差しとそのくちばしの鋭さ、南アフリカでライオンと目が合ったときのことを思い出した。「あのときは確か、危ないっていわれたのよね、汗っ」。朝からスリルたっぷりのショーだった。

2015.08.14(金)
文・撮影=たかせ藍沙