ご当地のお楽しみ その2
「箱根寄木細工を現代に生かす職人の魂」

露木清高氏が手がけた香合わせ。ロビーラウンジのギャラリーに置かれた作品の数々は、購入することもできる。
箱根寄木細工の伝統を未来へとつなぐ露木清高さん。

 この見事な箱根寄木細工を作っている露木木工所の4代目である露木清高さんに、この伝統工芸の成り立ちなどをお聞きした。

――箱根の寄木細工は、いつ頃、どうして生まれたものなのでしょうか?

「小田原では、木のろくろを挽いて木を削り出す木工の歴史が1200年あると言われ、木工職人が育つ風土があったこと。そして、箱根の山の樹木の種類がたいへんに多く、いろんな木の自然の色を生かした木工を作ることができたことが、寄木細工が生まれた背景です。その技術は、江戸時代末期に箱根町畑宿に住んだ石川仁兵衛によって創り出されたものです」

――箱根の寄木細工でイメージする細かな模様の箱とモダンな器ものとは細工が異なりますね?

「寄木細工には『ズクもの』と『無垢もの』の2種類があります。いくつもの木片を接着剤で貼り付けたパーツを組み合わせて模様を作ったものを「種木」と呼び、この種木をカンナで薄く削ったもの(ズク)を木製品の表面に貼り付けて作るものが『ズクもの』で、細かな模様の箱はこちらですね。一方、種木をそのままろくろで削り出して作るのが『無垢もの』で、木の色をそのまま柄に生かしたものができます」

種木を薄くカンナで削ったものを貼り付けて作る「ズクもの」。
ろくろで種木を削り出す「無垢もの」。

――露木木工所4代目として、どのように寄木細工を学んできたのでしょうか。また、これからどんなものを作って行きたいですか?

「京都伝統工芸専門学校(現在は大学校)を出て京指物の技術を学んでから、父のやっていた露木木工所に入り、箱根寄木細工を手がけるようになりました。今は箱根細工技能士で、寄木細工の若手集団『雑木囃子(ぞうきばやし)』の代表も務めています。ストライプの柄を、父は幅を均等にして作っていましたが、自分の代からは育った木の変化を生かすようなデザインで作っています。伝統の技術・技法を生かしながら、時代によって、工房によって、人によって異なる個性を大事にしたいですね」

左:ロビーラウンジで披露される紙芝居「寄木のひみつ」。15分ほどの解説を聞けば、寄木細工に詳しくなれる。
右:細かなパーツ作りの様子を図解。

 ちなみに、「星野リゾート 界 箱根」では、毎日夜の9時から「寄木のひみつ」という紙芝居を開催。寄木細工の誕生や作業工程について分かりやすく解説している。

こんなにシンプルな木片でも隙間なく貼り合わせるのは意外に難しく、自分で作ると露木さんがいかに達人なのかが分かる。

 寄木紙芝居の上演後は、露木氏がプロデュースした寄木コースター作りにトライすることができる。木片のパーツをパズルのように組み合わせて、自分だけのオリジナルの作品を作ることができるのだ(費用は1個1,500円)。

2015.08.04(火)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹