ご当地のお楽しみ その3
「徳川家康の時代から今に続く、華麗な手筒花火」

手持ちの筒から火柱が吹き上がる遠州手筒花火。その勇壮さには息を呑むばかり。

 この地域に古くから伝わる遠州手筒花火。地元においてその技術の継承に務めてきた「白洲手筒煙火会」の西野勝成さんと中野一敏さんのおふたりにお話をうかがった。

――手筒花火はいつから作られていますか?

 「徳川家康の時代から、お膝元の三河や遠州では、火薬を武器だけでなく花火にも使っていた歴史があります。火縄銃にも使われている、昔ながらの黒色火薬に鉄の粉を混ぜて作っていて、地域に代々伝わり、村祭りやイベントで上げられてきたものです」(西野さん)

「白洲手筒煙火会」西野勝成さん(左)、中野一敏さん(右)。浜名湖近辺に50近くある手筒花火の保存会の一つ。幼少の時から勇壮な手筒花火を見て育ち、自分達の手で作り、花火を上げて伝えていく。

――どうやって作って、上げるのですか?

「まず、火薬を入れる竹筒をそれぞれが作ります。竹を切って20日間干して、補強に紙を巻いて荒縄で締めた上に、さらにゴザを巻いて化粧回しをその上にします。火薬は花火を上げる当日に花火屋に行って火薬をもらい、鉄の粉をつけて、その入れ物に詰めるのです。花火を上げる時は、一人はこの竹筒を両手で抱え、点火者が、竹の節になる点火口に小さな火種を突っ込むんですよ」(西野さん)

手作りの手筒花火。

――勇壮な手筒花火ですが、火の扱いは大変では?

「筒から吹き出す花火は800度、6メートルから10メートル近く吹き上がり、最後に大きな音を上げて爆発する勇壮なもの。花火を上げるには消防署の許可が必要ですし、保存会の会員一人一人が花火の取り扱い講習を受けています。時間も費用もかかるものですが、小さい時から自分たちが見てきた花火を、安全第一に見てもらうことを心がけています。手筒花火は、この遠州と三河だけで見られる伝統の花火。こうした機会に多くの方に見てもらい、後世に伝えていければと思っています」(西野さん)

「界 遠州」の夏の風物詩である遠州手筒花火。ご当地ならではの楽しみだ。

※「界 遠州」の中庭では、遠州手筒花火を2015年7月12日(日)、8月2日(日)、16日(日)、23日(日)、30日(日)に無料で鑑賞することができます。

星野リゾート 界 遠州

所在地 静岡県浜松市西区舘山寺町(かんざんじちょう)399-1
アクセス JR浜松駅から無料送迎バスあり。約45分(要予約)
電話番号 050-3786-0099(界予約センター)
URL http://kai-enshu.jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

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2015.06.14(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=石川啓次