マレーシアの赤い美食。
海老のスープが濃厚な「ホッケンミー(ペナンスタイル)」

 こちらがペナンのホッケンミー。先ほど紹介したクアラルンプールのホッケンミーに比べると華やかな見た目です。さらに、炒めた麺ではなく、スープ仕立てになっています。

「ホッケンミー(ペナンスタイル)」4~5リンギット(約150円)。赤色は唐辛子によるものだが、そこまで辛くはない。

 ペナンのホッケンミーは、海老の殻やミソから丁寧にとったダシが命です。スープは食欲をそそる唐辛子のスパイシーさと、海老のうま味をこれでもか! ときかせていて、贅沢な味です。さらに注目すべきは麺。通常、日本ではひとつの麺料理には1種の麺を使うことがほとんどだと思いますが、この料理には1杯のなかに、イエローミー(卵麺)とビーフン(米麺)の2種類の麺が入っています。弾力のあるイエローミーの食感と、ツルツルッとしたビーフンの喉ごしの両方を味わうことができ、これがハマるんですよね~。

干し海老と生の海老のダブルの海老使い。小ぶりの器で提供されることが多く、おやつに食べられるサイズ。

 具は、海老、豚肉、青菜、ゆで卵、揚げ玉葱など種類豊富。味の中核に海老のうま味と揚げ玉葱の香ばしさがあり、食べすすめるごとにいろいろな味が楽しめます。もちろん、スープは最後の一滴まで残さずにどうぞ。

ペナンのホッケンミー屋台。代々受け継いできたスープの味は、それぞれの屋台でこだわりがある。

 さて、この赤いホッケンミー。クアラルンプールやその他の地域では、「ハーミー(海老麺)」という料理名で提供されています。つまりは、ペナン以外で、ペナンのホッケンミーが食べたくなったら、ハーミーを頼めばいい、ということ。なんだか複雑なクイズのようですが、ひとつひとつ紐解いていくのもまた楽しい。

シンガポールのホッケンミー 4~6シンガポールドル(約500円)。

 さて、最後はおまけ。シンガポールのホッケンミーはこちら。

 またもや、同じ名前の違う料理です。マレーシアの黒、赤に対して、白いホッケンミーとでもいいましょうか。海老と豚肉からとった濃厚エキスを麺に煮含ませて作る料理で、食べる直前に柑橘系の果実をギュッと絞って酸味を足し、ひりっと辛いチリペーストを好みで混ぜながらいただきます。このホッケンミーもとてもおいしい。

 いかがでしたか。ホッケンミーと出会って「料理も人も、見かけで判断しちゃいけないよ」と心に刻んだ私。おいしいだけじゃない。ときに人の価値観まで変えてくれるマレーシア料理。偉大です。

日本で「ホッケンミー」を食べるならココ。日本でも2つのタイプのホッケンミーが食べられます。

ペナンレストラン(東京都港区芝) ※ホッケンミー(ペナンスタイル)を提供
URL https://www.facebook.com/PenangRestaurant

マレーアジアンクイジーン(東京都渋谷区渋谷) ※ホッケンミー(クアラルンプールスタイル)を提供
URL http://www.malayasiancuisine.com/

マレーカンポン(東京都中央区八丁堀) ※ホッケンミー(クアラルンプールスタイル)を提供
URL http://www.malaykampung.com/

マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://www.malaysiafoodnet.com/

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2015.04.02(木)
文=古川 音
写真=古川 音、三浦菜穂子