マネージメントを手がける「2.5D」にも注目!

伊藤 最近のヒップホップをあんまり聴かないから、「水星」がtofubeatsのリアレンジとかという事実は置いておいて、そんなことは関係なくDAOKOの「水星」は、JKならではの世界や時代や現実や非現実がサクレツしている。っていうかtofubeatsをヒップホップと括っていいんですかね?

山口  もうジャンルで括ること自体に意味がないのではないですか? デジタルの進化で従来のジャンルが意味を失った新時代の到来を感じさせるアーティストですね、ってなんか音楽評論家みたいなこと言ってるな俺(笑)。

伊藤 (笑)。でも、そういうコトなんですよね。このアルバムに参加しているクリエーターたちもジャンルレスですしね。

山口  音楽業界人的には、マネージメント事務所が、「2.5D」だということにも注目しています。一般的にはPARCOパート1のオルタナティブスペースをプロデュースして一般にも知られるようになりましたけれど、池尻大橋でインディペンデントにやっていた時から、「次の波」っていう雰囲気を持っていたチームでした。

 新しいムーブメントが伸張する時って、マネージメントのフィールドでも新しいプレイヤーが台頭してくるのが日本の音楽業界なんです。最近だと、読者モデルとクラブイベントオーガナイザーのアソビシステムが、きゃりーぱみゅぱみゅと原宿カルチャーを掲げて、一世を風靡しているのが良い例です。

伊藤 なるほど、化学反応が起きやすい空間があってこそ、ぶっとんだものが生まれる、そんなタイミングなんですかね。

山口  今回の妄想分析は、どのくらいぶっとぶのか楽しみです。

伊藤 3月の黄昏、風は息をひそめている。遠くに見える赤色だった鉄橋には、4分おきに電車が黄色い窓をバカみたいにならべて、ガタガタと虚しい音を立てる。日中は少し暖かくなってきたとはいえ、この河川敷の地面は、冬に蓄えた冷たさをまだ忘れていない。それは若い肌に8分おきに鳥肌となって襲ってくる。

 少女は死んだススキに寄り添うように、座っている。お尻まで地面につけて、足は制服のスカートから川の方へ投げ出している。辺りに散らばるススキの亡骸をちぎっては、川の方に向かって投げる。何度もそれを繰り返すが、ススキはフワッとふくれ上がるような軌道を描いて、少女の紺色の靴下を汚すだけで、川には届かない。

 そこに白と茶色と黒が均等に混ざり合った一匹の猫が、ススキの中から現れる。尻尾も片耳もないその猫は100歳にもみえるし、生まれたばかりにもみえる。少女の脇にスッと座り、川の方を見つめたままニャーという。すると目の前の水面がヌルッと揺れて、2メートルくらいの銀色が翻る。しばらくすると水面はまた静かになる。シーン……。少女は川を見つめたままニャーという。猫もニャーという。また鉄橋は、虚しい音を立てる。

山口  なんか、今回はラップ風に感じられた。若い才能に引っ張られたね(笑)。

DAOKO『DAOKO』(「水星」収録)
トイズファクトリー 2015年3月25日発売
初回限定盤インディーズBEST盤付き2枚組[CD]2,315円、通常盤1,852円(税抜)
■1997年生まれのDAOKOは、ニコニコ動画に投稿した楽曲で注目を集め、2012年にインディーズから『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』をリリースする。メジャー第1弾アルバムとなる本作には、音楽面以外でも、アートディレクターのスティーブ・ナカムラ、写真家のノーバート・ショルナーなど、錚々たるスタッフが関わっている。
■「水星」作詞/Onomatope Daijin & tofubeats & DAOKO 作曲/tofubeats 編曲/PARKGOLF
■オフィシャルサイトURL http://daoko.jp/

【動画サイト】
「水星」
URL https://www.youtube.com/watch?v=Y3xehyYXbJw

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2015.03.14(土)
文=山口哲一、伊藤涼