これもラクサ、あれもラクサ。郷土の食材で作る究極のご当地麺

 マレー半島東側地域のクランタン州やトレンガヌ州のラクサといえば「ラクサム」です。魚だしとココナッツミルクを混ぜた、ほのかに甘いスープで米粉の麺を食べるのですが、この麺が少し変わっています。ロールケーキのように3重ぐらいにくるっと巻かれた極太麺で、コシのないやわらかな食感。「すする」のではなく、まさに「食べる」麺です。

ラクサム。甘めの魚だしを麺にからめながら食べる。具は魚のすり身、もやし、タイバジル、インゲン豆など。

 そしてここからは、さらに希少性が増すラクサを2つご紹介します。まずは「ラクサケダ」。ペナンの北に位置するケダ州で食べられています。米粉とタピオカ粉で作った麺は、つるっとした食感にぷりんとした弾力。スープはココナッツミルクと魚のだしに、タマリンドで酸味を加えたさっぱり系。そして、かならず添えられるゆで卵も特徴です。その昔、逃亡中の泥棒がどうしてもこの地域でしか食べられないラクサケダを食べたくなり、屋台に立ち寄ったところ、先回りをしていた警察に捕まったという、なんとものんきな逸話があるほど、ケダの人に愛されているラクサです。

ラクサケダ。スープは少なめで、温度は常温に近い。常夏のマレーシアでは、スープが熱々であることはあまり重要視されていない(写真提供:マルハイミさん)。

 そして最後に紹介するのは「ジョホールラクサ」。その名のとおりマレー半島最南端のジョホールで食べられているラクサで、麺がなんとスパゲティ。ハーブや生野菜をたっぷりのせて、魚と魚介で作ったカレー風のタレをあえて。お祝いの席でいただく特別料理で、ほとんどの場合が家庭で手作り。一般の屋台では出会えない、おめでたい日のラクサです。

ジョホールラクサ。お肉のように見える具は魚の身で、まさにマレーシア版のサラダスパ。写真のラクサは、ジョホール出身のマレーシア人の手料理。

2014.12.25(木)
文=古川 音
写真=古川 音、三浦菜穂子