完成後にばらばらになった大作3点が再び揃う

「オセアニアの記憶」(1953) (C) Succession Henri Matisse

 今回の展覧会では、マティスの切り紙絵のなかで最もよく知られた「ジャズ」の連作を全点展示。書物や版画などで目にする機会が多いシリーズの原画がすべて見られる。

 また、「かたつむり」(テート・モダン所蔵)、「オセアニアの記憶」(ニューヨーク近代美術館所蔵)、「マスクのある大きなコンポジション」(ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)の大作3点が揃って展示されるのも大きな話題だ。当時のマティスのスタジオの写真を見ると、この3点がひとつのまとまった組作品として構想されたことが窺われる。完成後にばらばらになった3点が再び揃うのは今回が初めてだ。そのほか「ブルーヌード」の連作など、見どころには事欠かない。

「ブルーヌード」をあしらったポスターのデザインもマティス風。

 人気の高いマティスの切り紙絵に焦点を絞った展示としては前例のない規模と内容だ。美術館が「一生に一度の展覧会」と宣伝するのもうなずける。ロンドンの後はニューヨーク近代美術館に巡回する予定なので、チャンスのある人は見逃さないように。

「アンリ・マティス ザ・カット・アウツ」
会期 2014年4月17日(木)~9月7日(日)
会場 テート・モダン(ロンドン)
URL http://www.tate.org.uk/visit/tate-modern

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

Column

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2014.06.25(水)
文=鈴木布美子