世界一の映画祭は、プレスパスを取得するだけでも一苦労

会場となるパレ・ド・フェスティバルの屋上から。まさにコート・ダジュール=紺碧海岸!

 私がカンヌ映画祭を初めて取材したのは、10年前の2004年。柳楽優弥が史上最年少で男優賞を受賞し、ウォン・カーウァイの『2046』に出演した木村拓哉がレッドカーペットを歩いた年、と言えば記憶にある人も多いんじゃないかな?

 あの年はタランティーノが審査委員長をつとめ、マイケル・ムーアの問題作『華氏911』がドキュメンタリー映画としては初めてパルムドール(最高賞)を受賞したりと話題も多く、数千人ものマスコミや映画関係者がカンヌに来ていた。

今年のアイコンは、『8 1/2』のマルチェロ・マストロヤンニ。

 カンヌ映画祭は、世界中の映画祭の中でもプレステージが最高なので、プレスパスを取得するだけでも一苦労。私のようなフリーランスの物書きの場合は、雑誌や新聞などに推薦状を書いてもらい、それを英語に直し、過去の実績をまとめて数カ月前に映画祭事務局に申請し、お眼鏡にかなって初めてパスを出してもらえるという仕組み。しかし、当時の私は知らなかった……プレスパスに階級があることを!

プレスパスはこんなにある。配偶者パスというのもあるから驚き! 私はここ8年ほどずっとピンク。

 初めてのカンヌでもらったのは、黄色いパス。さあ、これで映画も記者会見も見られると思ったら大間違い。ブラッド・ピットが出ていた作品の記者会見に早めに並んで入ろうとしたがまったく入れてもらえない。後から来た白やピンクのパスの人々は入っていくのに!

 実はプレスパスはランクによって色分けされていて、フランスでは新聞が高い地位を誇っており、最上位は大手新聞記者を意味する白、一方黄色は私のような新参者や、部数の少ない雑誌を意味する最下位だったのだ。また、会見場は全然せまくて200人も入ればいっぱい。4000人以上のプレス登録があるにもかかわらず、だ。

 だからブラピのような大物の会見には黄色いパスでは全然入れない。今は少しランクがあがって、上から3番目にあたるピンクパスになったけど。それでも去年のディカプリオの会見には入れず!

 いやあ、厳しいわ、カンヌ。さて、今年はどうなることやら?

石津文子 (いしづあやこ)
a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。ときおり作家の長嶋有氏と共にトークイベント『映画ホニャララ はみだし有とアヤ』を開催している。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。俳号は栗人。「もっと笑いを!」がモットー。