
キアンティはここから始まった!
時を遡ること972年。日本では平安時代の1051年、トスカーナ州シエナ県のガイオーレ・イン・キアンティにベネディクト派の修道院「バディア・ア・コルティブオーノ」が建設されました。

ガイオーレ・イン・キアンティという村は、フィレンツェとシエナの間に広がるキアンティ・クラッシコの生産地区である8つの村のひとつで、キアンティ・ワインの誕生の地です。「イン・キアンティ」が村名の後ろに付くガイオーレ、ラッダ、カステッリーナ、グレーヴェは、キアンティの起源であるという証です。現に、後に追加された4つの村名には、「イン・キアンティ」という名前がないことからも一目瞭然ですね。
シエナに近いキアンティ・クラッシコ南部に位置するガイオーレですが、バディア・ア・コルティブオーノは標高約600メートルの高地にあり、夏の太陽の下でもひんやりとした空気に包まれています。バディア・ア・コルティブオーノに行くには、フィレンツェからローカル線に乗り換え、モンテヴァルキ駅で下車し、そこから車で約20分。キアンティ・クラッシコのトレードマークである黒い雄鶏を通り過ぎ、坂道を上っていくと急に森の中に入ったように緑に囲まれます。その森を通り抜けると目の前が開け、修道院が視界に入ってきます。

静かに、そして、厳かに聳え立つ修道院。
その前で目を閉じて深く息を吸い込むと、過去へタイムスリップしたような気になれます。

1051年に、ジョヴァンニ・グアルベルト修道士は、地元の強大な権力を持つ貴族から聖職者たちの住居と巡礼者たちの宿泊所建造の命を受け、コルティブオーノのサン・ロレンツォ教会を寄付されました。そしてそこには、高い志を持つたくさんのベネディクト派の修道士たちが集まり、すぐに卓越した宗教的、社会的地位を確立しました。貴族たち所有の美術品や土地のさらなる寄付が集まり、また、混乱の時代に住まいや保護を求める貧しい農民たちの居場所となりました。このようにして、バディア・ア・コルティブオーノは多くの財産を得、何世紀もの間、消滅することなく現在に至ります。
博識で農業に価値を見出していたヴァッロンブローザの修道士たちは、エトルリア人やローマ人がすでに紀元前300年からこの地域で農業をしていたという事実に着想を得て、ブドウとオリーブを中心に農地の耕作を始めました。彼らは農業の傍ら、勉学に励み、また、宿泊施設の提供と病人の看護に献身しました。
この修道院は、Badia a Cultus Boni(バディア・ア・クルトゥスボーニ)と呼ばれました。この名はラテン語で、Culto Buono(よい信仰)、Buona Cultura(よい文化)、Buona Agricoltura(よい農業)、Buon Raccolto(豊饒)という意味を持ちます。
そして、この修道士たちの記録に、歴史上初めて“CHIANTI”という名前が登場しました。12世紀末の文書です。

コルティブオーノの敷地である森の中には、エトルリア人の聖地である“チェタムラ・デル・キアンティ”と呼ばれるエトルリア人の村落があります。エトルリア人の文明はローマ文明が始まる前にイタリアで開花した文明ですが、近年、コルティブオーノの敷地内にあるエトルリア遺跡の中で、キアンティの歴史とブドウ栽培に関わる大切な事実が発見されています。
トスカーナ州遺跡保護団体とフロリダ大学エトルリア文化リサーチチームの研究により、「キアンティ」という言葉を最初に使用したのはエトルリア人であったという事実が明らかになったのです。
エトルリア人は、チェタムラにある井戸を「キアンティ」と呼び、そこから湧き出た水が小川になり、現在マッセローネと呼ばれる川となりました。また、995年には修道士たちが、この小川沿いに広がる渓谷を「キアンティ渓谷」と呼んでいたということなので、歴史はここでも繋がっていたことが証明されています。

さらに、チェタムラの井戸の底から、紀元前3世紀~1世紀までに遡る陶器の破片や動物の骨、麦やオリーブ、ナッツ、そして、銅製の花瓶などが見つかりました。


そして、キアンティでのブドウ栽培の歴史がここに存在していたことの証明となる、非常によい状態で保存されたエトルリアとローマ時代の「500粒のブドウの種」も発見されました。

「キアンティ」の起源はここにある。それは紛れもない事実。
そんな確信を持ちながら「エトルリア人たちはこのブドウをどんなワインにしていたのだろう?」と思いを巡らせていると、どこからともなく美味しそうな匂いに現実に連れ戻されます。
その美味しそうないい匂いは、修道院の中にあるリストランテ・コルティブオーノからでした。彼の昔、修道士たちが暮らした宿泊施設は、今はアグリツーリズモになっており、美味しいお料理とワインが楽しめるレストランや、素敵なインテリアのお部屋が用意されています。

バディア・ア・コルティブオーノのキアンティ・クラッシコは、自社畑のブドウ樹から優れた樹を何種類か選び、台木に接ぎ木して育てていくマサル・セレクションで選ばれた苗木を使用しています。有機栽培においても、1980年代からいち早く始めています。バディア・ア・コルティブオーノの造るキアンティ・クラッシコは、ピュアな果実味と陰影に富んだニュアンスが特徴です。バディアのキアンティ・クラッシコ特有のしっかりした酸とヴェルヴェットのようなタンニンがビステッカ・アッラ・フィオレンティーナなどのトスカーナの郷土料理にはもちろん、煮物やマグロのお寿司などにもよく合います。


これから、キアンティ・クラッシコに合う食材が美味しくなる季節です。キアンティ・クラッシコの起源であるガイオーレ村で造られたこのワインは、秋のトスカーナの旅へといざなってくれることでしょう。
●日欧商事株式会社
●高品質なイタリア食材とワインのオンラインショップ “ITALIAKARA”
概要
応募期間 | 2023年9月15日(金)~2023年10月15日(日)23:59 |
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賞品 | バディア・ア・コルティブオーノ社 キアンティ・クラッシコ 2020年ヴィンテージ(750mL 4,840円) |
当選人数 | 3名様 |
応募方法 | 下のボタンより応募フォームにお進みいただき、必要事項をご記入の上、ご応募ください。 応募に際し、CREA WEBメンバーの登録が必要です。 CREA WEBメンバーとは? |
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