文化の違いこそ、南アフリカの魅力

 海辺の美しい街ケープタウン。「マザーシティー(母なる都市)」という愛称で呼ばれ、欧州文化が色濃いこの街の一角に、カラフルな家が並ぶエリアがある。ボカープ地区と呼ばれる、ケープマレーの住宅街だ。ケープマレーとは、かつてオランダから入植した開拓者たちが、アフリカやインドネシア、マレーシアなどから労働者として連れてきた人たちの末裔のこと。異国から来た彼らがもたらした文化は、現在の南アフリカに大きく影響しているという。実際、彼らの家庭料理であるケープマレー料理は、今やケープタウンの郷土料理ともなっている。

左:欧州文化が香るケープタウンの街
右:ポップなカラーの家が並ぶボカープ地区

 ボカープ地区は住宅街であると同時に、ちょっとした観光地でもある。フォトジェニックな光景から、カメラ片手に散策しているツーリストも多い。頭にスカーフを巻いた女性が歩き、スパイスショップもあるこの一角は、日本人が訪ねると東南アジアに来たかのような錯覚も覚える。だが、これも南アフリカのカルチャーの一部。

この街に住む料理研究家によるケープマレー料理教室も人気だという

 ヨハネスブルグでも、ヨーロッパとアフリカがミックスした独特の文化を感じるはずだ。かつてのスラム街をみごとに再開発したニュータウン地区では、ヨーロッパ風のカフェが並ぶ通りに、アフリカンアートが飾られている。街のいたるところには、ズールー族のヒーローを主役にした舞台のポスターも貼られていた。国歌は英語やアフリカーンス語、コサ語など多言語で歌われているし、ラジオからは、ジャズをはじめハウス、ラップ、アフリカン・ゴスペル、クラシック、ロック、ポップス、伝統音楽など多彩な音楽が聞こえてくる。

民族衣装のようなものを纏う人もいれば、そうでない人も

  「ジョーバーグ」。ヨハネスブルグを歩いていると、肌の色や年齢を問わず、多くの人がこの言葉を発していることに気づく。これは、ヨハネスブルグの愛称。ルーツや肌の色が違っても、彼らの故郷はひとつ。宗教や文化的背景が異なればさまざまな問題も少なからずあるだろう。だが、だからこそ、互いの魅力を称賛しあい、ユニークな文化が育まれるのだ。今年で民主化20年を迎える南アフリカ。この国は、アパルトヘイトという悲しい歴史を過去に刻みながらも、多くの民族が協調し暮らす国として、ほかの国にはない独特の魅力を放っている。

ヨハネスブルグのダウンタウンにあったパブリックアート。「死ぬ前にアフリカを変えたい」と書かれていた

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn/

Column

新しい風が吹く南アフリカへ

ネルソン・マンデラ逝去によって注目を集めた南アフリカ共和国は、2014年、記念すべき民主化20周年を迎える。日本でこそあまり知られていないが、実はこの国には、素敵なラグジュアリーリゾートや多彩なグルメが満載なのだ。どんどん進化を続ける南アの魅力を掘り下げる。

2013.12.28(土)