フリウリの丘陵地帯の可能性を信じたひとりの男の話

リヴィオ・フェッルーガ社 フリウラーノ 2021年ヴィンテージ 750mL 6,600円。

 新緑の5月。緑が眩しい時期になるとなぜかフリウリの白ワインに手が伸びてしまいます。

 フリウリの白ワインの、どちらかというと緑を帯びたレモンイエローが木々の緑と同調しているからなのか、もしくは、グリーンアスパラやスナップエンドウ、グリーンピースなどの緑色の旬野菜に合うからなのか、5月はフリウリのワインが恋しくなります。

 フリウリとは、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州というイタリア北東部にある州で、北はオーストリア、東はスロヴェニアと国境を接している州です。

フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州地図。

 寒い地方なのですが、南にアドリア海がある影響で気候が温暖になり、ブドウ栽培に適した環境が生まれます。また、フリウリの丘陵地帯にあるこの土地特有の「ポンカ」という土壌も、フリウリの高品質ワインを語る上では欠かせない要素です。

 ポンカは、元々は海底だった始新世期時代の泥灰土と砂岩が層になった土壌で、触るとホロホロと崩れる非常に脆い土壌です。水はけが非常によく、鉄分や石灰分を多く含んでいるため、ワインに深みとミネラル感を与えます。

ポンカ土壌。

 さらに、ここに風の影響が加わります。時折吹く北西の風 “BORA”(ボーラ)が雲や湿気を吹き飛ばし、イタリア一雨が多いにも関わらず冷涼で乾燥した気候を保ちます。州都トリエステは、「風の街」としても知られていますね。

トリエステ。

 他の国境の州と同様、フリウリにもたくさんの国家が足跡を残しました。

 古代ローマ時代にジュリアス・シーザーが「ジュリアスの都市」の意味を持つ、Forum Julii(フォーラム・フリイ)という都市を築きました。重要な地方として位置づけられていたフリウリは、オーストリア、フランス、そして再びオーストリアと、支配国が次々に入れ替わりました。第一次世界大戦ではイタリアとオーストリアの領土争いの主戦場となり、壊滅的な被害を受けてしまいます。

 そして、戦後復興の時代、田舎の農地を捨て、新興の工場が立ち並ぶ近隣の街に移住していく人々が多い中、フリウリ丘陵地のブドウ畑のポテンシャルを信じて疑わず、コルモンズに留まった一人のフリウラーノ(フリウリ人)がいました。

 後に「フリウリのワイン造りの父」と呼ばれるようになるリヴィオ・フェッルーガです。

リヴィオ・フェッルーガ。

 リヴィオは、50年代後半にロザッツォ近郊の土地28haを購入し、ゼロの状態から畑を耕しました。高品質ワインの醸造に注力をし、この地でワインの瓶詰めを始めた第一人者となりました。

 この地で秀逸なワインが造られることがまだ知られていなかった当時、リヴィオは、「消費者に語りかけるラベル」を作成しました。それは、フリウリ丘陵地の地図のラベルで、ワインがどこで造られているかが一目瞭然でわかる画期的なラベルなのです。

 このラベルは、フリウリの丘陵地帯の卓越性を世界にアピールすることを可能にしました。そして、半世紀以上経った今もなお、地図ラベルはリヴィオ・フェッルーガ社のワインの顔となっています。

当時のラベル。

 5月といえば、バラが綺麗に咲く時期でもありますね。

 リヴィオが最初に購入した畑があるロザッツォの丘を見守るように、その頂上にはフリウリ最古の修道院であるロザッツォ修道院が佇んでいます。

 1950年代にロザッツォ丘陵地帯でブドウ栽培を始めたばかりの時、リヴィオはこの修道院と修道院を取り囲むブドウ畑に一目惚れをしました。数々のチャレンジを乗り越え、現在、この畑とワイナリーはすべてリヴィオ・フェッルーガ社に託させています。

ロザッツォ修道院とその畑。

 「ロザッツォ」は、イタリア語で書くと”ROSAZZO”。ROSA、そう、バラの咲き誇る修道院なのです。実はこの修道院の中には、フリウリ最古のワインセラーもあり、ワインの聖地にもなっています。

ロザッツォ修道院内のワインセラー。

 毎年5月にはRosazzo da Rosa(ロザッツォ・ダ・ローザ)というバラのお祭りが開催されます(2023年は、5月6日と7日に開催されました)。コンサートを始め、アートギャラリー、バラの鉢植え、陶器、リネン類、アクセサリー類などの売店が並ぶメルカートも設置されたそう。芳しいバラの香りに包まれた幸せな空間が想像できます。いつか行ってみたいと願う憧れのお祭りです。

バラの季節の修道院。

 何事もあきらめないリヴィオの頑固なまでの情熱が実を結び、この畑からは毎年素晴らしいリヴィオ・フェッルーガのワインが生まれています。そして、リヴィオは102年の生涯を閉じる2週間前までこの畑で仕事をしていたというのですから、本当にこの畑を愛していたのだと想像がつきます。

 たゆまぬ努力で信念を貫き、フリウリが「白ワインの聖地」と呼ばれるまでの足がかりを築いたリヴィオの魂は、いつまでもこの地で生き続けることでしょう。

リヴィオの生誕100歳を記念して、ロザッツォの畑に創られたヴィーニェ・ミュージアム。

 最後にワインとごはんの話も少々。

 フリウラーノというワインは、地元の人たちの心のワインです。

 フリウリのワインバーでの最初の一杯はフリウラーノが鉄板、ということでフリウラーノは地元消費量ナンバーワンのワインなのです。

 フリウラーノという品種から造られるこのワインは、黄桃やアプリコットにハーブやスウィート・ペッパーのニュアンスが加わり、ボリューム感と骨格のある味わいが特徴です。余韻には典型的なアーモンドのようなほろ苦さが続きます。

 ジャガイモとモンタージオ・チーズをすりおろしてカリッとなるまで焼いた、フリーコという郷土料理との相性は抜群。ワインのもつ滑らかなテクスチャーと後味の苦味がお料理のボリュームと好バランスです。でも、フリーコは冬のお料理。

 今の季節なら、旬の野菜と一緒に冷えたフリウラーノを合わせると清々しい一面も楽しめるでしょう。

フリーコ。

●日欧商事株式会社

https://www.jetlc.co.jp/

●高品質なイタリア食材とワインのオンラインショップ “ITALIAKARA”

https://italiakara.myshopify.com/

概要

応募期間 2023年5月19日(金)~2023年6月18日(日)23:59
賞品 リヴィオ・フェッルーガ社 フリウラーノ 2021年ヴィンテージ(750mL 6,600円)
当選人数 3名様
応募方法 下のボタンより応募フォームにお進みいただき、必要事項をご記入の上、ご応募ください。
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