「お金ではない楽しいことに重きを置いて生きたい」

――対談で特に印象的だったエピソードや体験はありましたか?

 「かみきのかみづくり」のロギール(・アウテンボーガルト)さんです。実際に咲いている花を摘み、自分でデザインをして和紙を作るんですが、その体験がすごく楽しかったです。本当に世界で1枚しかないものが作れるところがすごく魅力的ですし、「らんまん」っぽいなとも思いました。

 対談では皆さんとのお話がどれも印象深かったけど、すごく残っている言葉は梅原(真)さんのお話。「高知県はお金がない」という言葉で、みんな共通して言うけど、それでも明るいっていう。

――高知県の予算が数字的に少ないというお話なんですよね。

 そうです。でも、みんな別にそれでいいと思っているし、増やしたいと言えば増やしたいけれど、別に本気で増やすためにどう動くかみたいなことは考えていない、と。今がすごく楽しいからそれでいいというのもあるし、お金がないからできることが限定されてくる=だからこそ発想を逆転させるそうなんです。「だったらこうしてみたらいいんじゃないか、ああしてみたらいいんじゃないか」という工夫が生まれていくというお話を聞きました。僕も確かにそれはそうだな、とすごく共感したんですよね。

 高知ならではの浜辺の美術館、「Tシャツアート展」の砂浜美術館はなかなか他の県では見ない美術作品だと思いますし、そういう工夫の成果なのではと思ったんです。条件があるからこそ、高知ならではの発想が出てきたりするのは、すごく素敵ですよね。

――神木さんが感銘を受ける、共感するような発想だったんですね。

 はい。梅原さんは「高知県民はお金がないけど人におごる」というようなお話もされていて。県民性の話で昔から、例えば、100万両をもらったらまるまる貯金をする県もあれば、半分使って半分貯める県もある、と。でも高知は100万両をもらって自分の懐からさらに100万を出して200万両で宴会をする、という県だそうなんです。豪快さと、お金では手に入らない素敵な時間や人との関わり合いがあるじゃないですか。そういうことにすごく重きを置いている県なのかな、と感じました。

 しかも、それを話す梅原さんが笑いながら「いや、そういう県なんだよねー!おもしろいね、そんな使っちゃうなんてね!」みたいな感じだったんです。そのこと自体もすごく素敵だし、お金ではなくて楽しいことに重きを置いている考えは、僕もそういう人間になりたいなと思いました。

2023.03.24(金)
取材・文=赤山恭子