伊藤さんが感じる京都の魅力とは?

――既刊で『東京てくてくすたこら散歩』『信州てくてくおいしいもの探訪』と、東京、信州があって京都だけ2冊目、それだけ魅力がある町なのですね。

伊藤 京都はこじんまりしていて、歩きやすい。人の息遣いが感じられ、古いものがいっぱいあって、観光客が多い割には、地元の人はそれらにふりまわされない。不思議な町です。「いけず」という言葉がありますが、それは京都の人が正直に生きているということではないでしょうか。

嵯峨野トロッコ列車/「トロッコ列車で秋の遠足」より

――同じ場所、お店に何度も通い詰めて、飽きることはないんでしょうか。

伊藤 お寺でもお店でも、1回行ったらおしまい、じゃなくて、季節どころか、時間を変えて行っても違うものが見えてきます。また、いわゆる穴場的なところでなくても、楽しみ方はあります。今回、嵐山のトロッコ列車に乗りましたが、紅葉の季節には車窓の景色は見事ですし、絶景ポイントでは列車のスピードを緩めてくれたり、存分に観光を楽しめます。甘味処「とらや」さんは誰でも知っているお店で、私もよく行っていたのですが、「虎屋菓寮京都一条店」は建築家の内藤廣さん設計で生まれ変わり、わざわざ行く価値ありです。東京の赤坂に本店がありますが、京都が発祥の地。瓢亭の朝粥も素晴らしいし、ホテル「ハイアット・リージェンシー」のビュッフェスタイルの朝食も気に入っています。新しいものも古いものも楽しめます。

ハイアット リージェンシー 京都/「ハイアットで朝食を」より

――それが、伊藤さんのスタイルですね。

伊藤 ピンポイントで気に入りの場所を訪ねていたり、エリアごとに紹介したりと、紹介の仕方はいろいろですが、私が楽しい、おいしいと感じるものに絞っています。普通の京都旅行のイメージとは違うかもしれません。どうやったら気持ちよく過ごせるか、こういう過ごし方もありますよという提案として読んでいただければ嬉しいですね。

伊藤まさこ(いとう まさこ)
1970年、神奈川県横浜市生まれ。文化服装学院でデザインと洋裁を学んだ後、料理や雑貨など暮らしまわりのスタイリストに。数々の料理本、雑誌で活躍するほか、自身も料理や旅の本を執筆するなど活動の幅を広げている。ロングセラーの『京都てくてくはんなり散歩』『東京てくてくすたこら散歩』『信州てくてくおいしいもの探訪』(すべて文藝春秋)シリーズのほか、『軽井沢週末だより』(集英社)、『伊藤まさこの食材えらび』(PHP研究所)など著書多数。

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京都てくてくちょっと大人のはんなり散歩

大人の京都旅は、ゆったり、しみじみ。
トロッコ列車でもみじ狩り、摘み草料理で春の味……。楽しくて癒される「京都の過ごし方」が詰まったフォトエッセイ。待望の第二弾!

著・伊藤まさこ
本体1300円+税 文藝春秋刊

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2013.11.20(水)