「ライトノベルで異世界ものが流行りましたが、僕が今回目指したのは重箱の隅をつつくような、地味でみみっちい異世界(笑)。些細な選択ごとに世界が分岐していくのは本当にありそうですが、ちょっと違う世界に行ったくらいでいきなりチート勇者になれるはずもない。結局どこへ行っても自分は自分、ということですね」

 一長一短の世界たちの中で、野崎は“私の世界”に戻れるのか。意外すぎるラストに、この世界は“本当に現実か”と読者も疑いたくなるだろう。


おぎわらひろし 1956年埼玉県生まれ。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞、14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞、16年『海の見える理髪店』で直木賞を受賞。


(「オール讀物」2月号より)

2023.02.15(水)