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治療中、距離が遠ざかるカップルはほとんどいない

おかざき 確かに、不妊治療を経験されたご夫婦にも何組かお話を伺いましたが、みなさんものすごく仲が良かったんです。取材の際は、失礼とは思いながら、治療中のご夫婦の認識の差にずれがあるかも思って、あえてご夫婦別々に話を聞かせてもらいました。でも、実際には覚えている内容も、一番つらかったことも、ご夫婦でばっちり同じ。二人三脚で治療をされていらっしゃいました。

石川 はい。みなさん、治療の過程でいろんな思いをぶつけあいながらも、同じ方向を向いて歩み寄っていらっしゃるご夫婦が多いですね。

 外来をしていてもですね、たとえば男性側に、「タバコを吸っている方は精子の所見が悪くなるので、奥様が採卵をする間だけでも、禁煙してみませんか?」と伝えると、聞き入れてくださる男性って多いんですよ。不妊治療をしていて、距離が遠ざかるカップルってあまりいないように感じます。

 なかには最後まで距離が縮まらない夫婦もいらっしゃいますけどね。でも本当に、不妊治療は夫婦一組一組にいろんなドラマがあって、漫画を通して「それでも夫婦の共同作業として一緒にやっていくんだ」という強いメッセージを伝えてくださったことには、とても感銘を受けています。

» インタビュー【後篇】に続く

おかざき真里(おかざき・まり)

大手広告代理店で働いていた1994年に漫画家デビュー。以来、数多くの作品を発表し、幅広い世代の女性から絶大な支持を受けている。広告代理店で働く主人公の仕事や恋愛を描いた代表作、『サプリ』は2006年にテレビドラマ化された。3人の子の母。

石川智基(いしかわ・とももと)

神戸大学医学部卒業後、同大医学部腎泌尿器科に入局。アメリカやオーストラリアで男性不妊の研究や診療に従事し、2013年にリプロダクションクリニック大阪、2017年にリプロダクションクリニック東京を開院。日本の男性不妊治療のトップランナーであり、顕微鏡下精巣内精子採取術(micro TESE)の手術は国内で最多の実績を持つ。『胚培養士ミズイロ』の医療監修者。

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次の話を読む「結婚しないの?」「産まないの?」 不妊治療の末、授からなかった女性の “納得”をおかざき真里はどう描いたか

2023.01.30(月)
文=内田朋子