文庫売り場はちょっと自慢

 BOOKS隆文堂の自慢は文庫売り場。普段づかいの本屋さんだからか、ベストセラーや話題の新刊書よりも、文庫本が売れるとのこと。文庫売り場は同一規模の書店と比べても広く、品ぞろえも充実している。訪問した9月末にドラマのクライマックスで盛り上がっていた半沢直樹シリーズや、国分寺の地元作家、東川篤哉さんの文庫が売れるのはもちろんだが、刊行されてから時間がたった定番作品も並び、コンスタントに売れていくと、文庫担当の上田さんはいう。

大型書店並みの文庫売り場。オススメ作品にはていねいにPOPカードがついている

 特に充実しているのは、時代小説や歴史小説。本棚一本をあてている佐伯泰英さんのシリーズは、新作が出るのを楽しみにしているお客様も多いという。新作を買って気にいったら、一冊ずつシリーズをさかのぼって買っている方、たまにいらっしゃってまとめて何冊か大人買いをする方。読書が日常になっているのが伝わってくる。

佐伯泰英さんの時代小説は特に人気が高い。各シリーズの最新刊を誰が見てもわかるように掲示しているのは、上田さんの工夫
オススメ本「浪人左門あやかし指南」シリーズとともに、上田砂由里さん。マンガも好きな上田さん、文庫がコミック化されたら、文庫売り場にも並べてオススメするという

 お店のエプロンを着けた上田さんは、取材中もしょっちゅうお客様から声をかけられる。「このシリーズ最新刊、出た?」、「これ読んで面白かったけど、何かオススメある?」……まるで商店街の魚屋さんのよう。活きのいいところが揃っている。「じゃあ、これと、これ、いただくよ」、2~3冊気軽に買っていくのを見ると、大人だなと思う。この棚の端から端までというガツガツした買い物ではなく、さりげない日常の買い物こそが、本当のオトナ買いなのかと。

【CREA WEB読者にオススメ】
 上田さんのオススメは、輪渡颯介さんの「浪人左門あやかし指南」シリーズ、『掘割で笑う女』、『百物語』、『無縁塚』、『狐憑きの娘』と4冊が講談社文庫から発行されている。ちょっとホラーあり、ミステリーあり、恋も冒険もあるバランスの取れた作品、テンポのいい上質のエンターテイメント。時代小説の入門書としても読みやすい。日常に本がある本読みのベテランおじさんたちのハートを捕らえて離さない時代小説、おじさんたちだけのものにしておいてはもったいない。

BOOKS隆文堂
住所 東京都国分寺市泉町3-35-1 西国分寺LEGA 2F
営業時間 10:00~21:30
定休日 無休
Twitter twitter.com/booksryubundo

小寺 律 (こでら りつ)
本と本屋さんと、お茶とお菓子(時々手作り)を愛する東京在住の会社員。天気がいい週末には自転車で本屋さん巡りをするのが趣味といえば趣味。読書は雑読派、好きな作家は、小川洋子さん、宮下奈都さん。

Column

週末の旅は本屋さん

新幹線や飛行機に乗らなくても、いとも簡単に未知のワンダーランドへと飛んでいける場所がある。それは書店。そこでは、素晴らしい知的興奮に満ちた体験があなたを待つ。さすらいの書店マニア・小寺律さんが、百花繚乱の個性を放つ注目の本屋さんへとナビゲートします!

 

2013.11.02(土)