この記事の連載

「きれい」を決めるのはあなた自身

 たとえば、毎日かならず「30分間」だけは掃除をすると決めましょう。もちろん45分でも、60分でも構いませんが、30分未満はお勧めしません。これ以上短いと、清掃が中途半端になってしまいがちですし、習慣化するまでの道もずいぶん遠くなってしまいます。

 まず、紙を1枚用意してください。ノートの切れ端でも、チラシの裏紙でも結構です。トイレ、風呂、台所の「使い終わりの掃除」は時間に含みませんので、前ページに挙げたそれ以外の作業を書き出します。

 掃除をおこなう時間帯は朝でも、昼でも、夜でも大丈夫です。始める際は、時間の区切りがわかるようにタイマーをセットしておきましょう。あとは掃除をするだけです。

 結論を先に申し上げると、30分では全部の掃除を終えることはできません。けれど、タイマーのアラームが鳴ったら、その時点で掃除を止めてください。それから、終わった作業について、メモ紙に印を付けます。翌日の30分は、手を付けられなかった作業から始めましょう。

 これを繰り返していくと、あなたの胸の内に体内時計ができあがり、その時間内にこなせる作業量がだんだん増えていきます。

 そして知らず知らずの間に、ごく自然に毎日の掃除が「平常心是道」の領域に入っていくのです。

 そのうちに、1日30分×3日のサイクルで、メモした作業が終えられるようになれば、1週間で家の中のすべての場所を2度掃除している計算になります。

 次の段階は、その状態の家を、あなたが「きれい」だと判断するかどうかです。「きれい」という言葉は、とても難しい。絵画と同じですね。

 いまでは、誰もが「素晴らしい」と認めるゴッホの絵も、彼の生前はまるで評価されませんでした。絵が主観に左右されるように、掃除に「どこまでのレベルを求めるのか」を決めるのもまた、主観です。

光永圓道(みつなが・えんどう)

1975年、東京都に生まれる。
1990年、比叡山にて得度受戒。
1997年、花園大学仏教学科卒業。
2000年、延暦寺一山・大乗院住職。
2008年、明王堂輪番拝命。
2009年、千日回峰行満行。北嶺大行満大阿闍梨。
2015年、十二年籠山行満行。
現在、大乗院住職、覚性律庵住職。

比叡山大阿闍梨 心を掃除する

定価 1760円(税込)
小学館
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

次の話を読む「クイックルハンディの使い勝手の よさは衝撃だった」天台宗大阿闍梨が “新しい掃除道具”を避けない理由

2022.11.25(金)
文=光永圓道