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踊りのパートナーとしての成長を実感する

 今回の公演ではスタントン・ウェルチ版『白鳥の湖』が全幕で上演される。数あるバレエ作品の中でも特に有名な作品だが、ウェルチ版では男性ダンサーの群舞や今まで観たことのない大胆な展開など、見応えがある内容となっている。

 クリムトの絵画を思い出させる舞台美術や華麗でゴージャスな衣装にも注目していただきたい。吉山シャール ルイさんは10月30日の12時開演の回でサラ・レイン(ゲスト・プリンシパル)と共演する。

 「サラ・レインさんはとても真面目な方で、コミュニケーションを大切にされています。8月にリハーサルをご一緒したときは、振付について指摘があるとすぐに対応していましたし、即座に具現化できるのは、さすがいろんな舞台を踏んでいる人だなと思いました。

 僕自身もヒューストンとドバイの公演でジークフリート役を経験していて、パートナーとして何をするべきかを把握できているので、彼女には高い評価をいただきました。僕は怪我の後だったので順調に回復できていることが嬉しく、彼女のパートナーとして対応できたことも一安心できました。

 女性のパートナーを務めるのはすごく神経を使うんですが、表現の仕方や動きのタイミングから通じ合えていることを感じました。まだお互いに理解しあう過程にはありますが、僕自身もパートナーとして踊ることに対してすごく成長できたと実感できています」

「『白鳥の湖』は僕にとっても意味のある作品で、2019年12月のツアーでニューヨークに訪れたときにも踊りました。コロナ禍になり、それ以来ツアーは実現していなかったので、今回の日本でのツアーはダンサーたち全員が楽しみにしています」

 吉山シャール ルイ・アンドレさんは今回の公演の後、ヒューストン・バレエの本拠地で上演される『くるみ割り人形』などに出演予定。そして新しい境地を目指し、ヒューストン・バレエを離れる。今後の彼にもぜひ注目していただきたい。

吉山シャール ルイ・アンドレ

2016年よりヒューストン・バレエのプリンシパルを務め、古典から現代作品まで多彩なレパートリーを持つ男性ダンサーのエース。イングリッシュ・ナショナル・バレエ、ヒューストン・バレエの名門アカデミーで研鑽を積み、2007年のローザンヌ国際バレエコンクールおよびユース・アメリカ・グランプリの両方でコンテンポラリー賞を受賞。10月30日、凱旋公演となる『白鳥の湖』に出演予定。

ヒューストン・バレエ『白鳥の湖』

公演日程:2022年10月29日(土)~30日(日)
10月29日(土)12:00(ベッケイン・シスク&チェイス・オコーネル)
10月29日(土)17:00(加治屋百合子&コナー・ウォルシュ)
10月30日(日)12:00(サラ・レイン&吉山シャール ルイ・アンドレ)
10月30日(日)17:00(加治屋百合子&コナー・ウォルシュ)
会場:東京文化会館 大ホール
https://www.koransha.com/ballet/houston/

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2022.10.27(木)
文=山下シオン
撮影=岡積千可