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紙とデジタル。どちらの読者にも作品を届けたい

 NFTは現代の版画! 名言も飛び出たこれらの作品は、「NEO美人画」と名付けられ、この先5年で毎年20点ずつ発表されていく。実はこの1枚の絵には、コミックス1巻分にあたる物語が込められており、手のかかり具合はマンガの絵の比ではないという。

「たかだか数点の絵を描くのに、夜な夜な半年以上時間をかけています。着物の柄とか変なものを描くわけにはいかないので、持っている着物を引っ張り出してきて、マジメに絵と向き合って。けど、その時間が楽しいんです」

 NEO美人画を通して、今の30代、40代が着物に興味を持ち、彼女たちがそれを次世代に引き継ぎ、文化が継承されるベースをつくれたら、と語る東村さん。デジタルで挑戦することで世界中の人々にも本物の和文化が受け入れてもらえるようになったらと夢は広がる。

 デジタルの可能性を模索する一方で、紙のマンガにもこだわりをみせる東村さん。その心境は?

「実は80代の読者で、『わたおぼ』の発売日を聞くために編集部に電話をくださる方がいるそうなんです。『若い3人が今後どうなっていくか楽しみで、繰り返し読んではときめいているんです』と。その方は、ボロボロになるぐらい読むからといつも単行本を2冊買ってくださっている。今はデジタルと紙の端境期ですが、両者は読み心地も違いますし、異なる良さがある。どちらの読者にも作品を届けられるよう頑張っていきたいと思います」

東村アキコ(ひがしむら・あきこ)

宮崎県生まれ。1999年デビュー。2010年に『海月姫』で講談社漫画賞、15年に『かくかくしかじか』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。『東京タラレバ娘』ほか、ヒット作多数。第47回アングレーム国際漫画フェスティバルにて『雪花の虎』がヤングアダルト賞受賞。

東村アキコ NFT「NEO美人画 2022」展

会期 2022年11月22日(火)~27日(日)
開館時間 11:00~20:00
入場無料
会場 スパイラルガーデン(東京都港区青山5-6-23 スパイラル1F)

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2022.09.19(月)
Text=Mao Yamawaki
Photographs=Wataru Sato

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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