吸水ショーツだけでなく、CBDオイル、お茶まで

「paceは、フェムテックというよりも『セルフケア』という呼び方で、皆さんが手に取りやすいようにしています」(市川さん)

 市川さんの最初の提案では吸水ショーツだけだったのが、プランが採用されてから、デリケートケアミスト、CBDオイル、和漢ブレンドディーと、作りたいものはどんどん広がっていった。

 CBD(カンナビジオール)は、麻に含まれる栄養素のひとつ。リラックスや睡眠への働きが話題の成分で、女性ホルモンのゆらぎにもよいとされている。この数年日本でも話題になっているが、市川さんも実際リラックス用に使っていたので、提案しやすかったそう。

 そしてブレンドティーは、外出先、旅行先でもほっと一息の時間に使いやすいことを考えて、茶葉ではなく粉状で、お湯で溶かすだけのインスタントティーにしている。

「台湾の漢方製薬メーカーさんの監修のもとで、女性のお悩みにぴったりな、天然の和漢植物エキスをブレンドしました」

 肌着に化粧水にCBDにお茶……バッグメーカーとしては老舗の企業でも、paceの商品は、エースとはこれまで関わりのなかったジャンルのものばかり。

「パートナー企業さんを探すところからの、1からのスタートでした」

 生理まわりについての悩みや欲しいものについて、社内でアンケートも実施した。直営店舗の販売スタッフからも、「女性のための取り組みが始まるのは嬉しい」という声が届いているそう。

「社長をはじめ、男性スタッフたちからも、ポジティブな反応ばかりです」

 「pace」というブランド名、よく見ると、中に「ace」、つまりエースの社名が入っている。

 当然、最初から計算したネーミングのように見えるが、

 「偶然だったんです!」と市川さん。

 「pace」には、「人生という長い旅路を、どんなときも自分のペースで歩めるように」との意味が込められているそう。

「女性の長い旅路には、小さな“小石”がたくさん転がっているのだと思います」

 初潮から始まって、PMSや生理痛がとても重い人はもちろんのこと、それほど重くはないという認識の人でも、毎月の生理に必要なケアや不快感は、生活にまったく影響がないとは言えないだろう。勉強や仕事にも、旅行やプールや温泉などプライベートの楽しみにも。こんな数知れない“小石”は、他の人からは気づかれないほど小さかったりするけれど、歩みは快適ではないし、つまずいて転ぶこともある。

「女性は、女性特有のバイオリズムにより生活に支障が出たり、思うように歩けなくなることがあります。バイオリズムに左右されず、その人自身の“ペース”で歩いていけるように。女性の長い人生に寄り添えるフェムテックブランドとして提案したのが、このpaceです」(市川さん)

 ここ数年で急速に広がっているフェムテックの考え方は、女性特有の不便や不調、不快を解消し、心地よくサポートするための技術やアイテム、サービスを広げている。

 業種の垣根を越えてのフェムテック、しかしバッグメーカーだからこそ、女性の「移動」を快適にしたい、という、その立場ならではの視点で開発されるのも面白い。

 そして、フェムテック分野で、まだ20代の女性のアイディアや行動力が実際に形になっていくのは、全世代の女性にとって、きっと頼もしいワンステップになるだろう。

生理用品を収納しやすいリュックが登場

paceブランドではないが、エースから生理用品を収納しやすいリュックが発売される。仕事用バッグブランド「W&.Day/Night」(ダブルアンド デイナイト)の「リッカ スクエアリュック」にフェムデイ(生理の日)対応ポケットを追加した「リッカ フェムポケットリュック」。荷物が下にたまりやすいリュックの構造を逆手にとって、空間ができる上部にポケットを設定。かさばる生理用品をしっかり収納し、出先のトイレでも取り出しやすい。もちろん普段から財布や鍵などを入れるポケットとして活用できる。オンラインストア(https://w-and-daynight.com/)にて9月中旬より発売開始。

Column

私たちの体を守りケアする
フェム・ヘルス研究室

女性の心身の仕組みを理解して、快適に暮らすめための連載。「フェムテック」アイテムの紹介をはじめ、PMS、月経、更年期などの女性のしんどさを和らげて、生活の質を上げる方法を考えます。

2022.09.02(金)
文=CREA編集部