2011年、若干15歳での初登場から約2年ごとに、この連載に登場している高杉真宙。通算5回目となる今回は、新たな道を歩み出した2021年を経て、サックスに挑戦した最新作『異動辞令は音楽隊!』までの2年間を振り返ってもらいました。

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●“ザ・敵役”を自由に演じたドラマ「私たちはどうかしている」

――まずは20年公開の『糸』。小松菜奈さん演じるヒロイン・葵とシンガポールで事業を始める冴島亮太を演じました。

 瀬々敬久監督とは初めてだったので、「どんな現場なのかな?」という思いはありました。冴島くんは自由度の高い役で、監督から「もうちょっと明るい感じでいいよ」という演出をしていただいてからは、その加減を調整しつつ、かなり自由に演じさせてもらいました。あと、最初に撮ったシーンがスーツ姿で葵さんと別れるシーンだったんですよ! なので、監督と「どこか愉快な冴島くんをどれぐらい成長させます?」という話をしたのを覚えています。結構、成長させました(笑)。

――続いて、出演されたのがドラマ「私たちはどうかしている」。浜辺美波さん、横浜流星さん、岸井ゆきのさんといった知人との共演のなかで、城島祐介という“ザ・敵役”な役割を演じました。

 ちょうどコロナ禍が始まった頃の撮影だったこともあり、2カ月のお休みもありましたし、現場でも、みんなでわちゃわちゃ話せる環境でもなかったんです。残念ながら、同窓会的な雰囲気にもなりませんでした。そんななか、“ザ・敵役”を自由に演じさせてもらいました。あとはなんと言っても、和菓子作りに専念しました。自宅で練習もしましたし、ご指導いただいた赤坂の和菓子店「青野」さんとは、撮影後も連絡を取り合っています。

●これまでと変わらず仕事ができていることに感謝

――21年に入ると、本人役で出演されたドラマ「バイプレイヤーズ ~名脇役の森の100日間~」からの映画『バイプレイヤーズ ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』が放送・公開されます。

 ただ、ひたすらに恐れ多いですが、そのメンバーの一人として、また松居大悟監督に声をかけてもらえたことは嬉しかったです。これまでいろんな仕事をコツコツやってきたからこそだと思います。初めましての方が多いなか、スタッフさん、キャストさんの思いが伝わってきました。僕に関しては「ドラマ版」では不思議な友情を育む田中要次さんとの絡みが照れましたし(笑)、「映画版」に関しては、ちょっと小生意気な感じを出したりして、楽しみながら演じました。

――春には、それまで所属していた事務所を退社。個人事務所となる「株式会社POSTERS」を設立されます。1年ちょっと経ってみて、心境などはいかがですか?

 これまでと変わらず、いろんなお仕事や役をいただけること、みなさんとお会いできていることに、とにかく感謝しています。会社を立ち上げたことによって、会社の仕事もやらなきゃいけないというのは大変ですが……。ファンクラブ「ゲームセンタータカスギ」を作ったり、演技以外の部分で僕がやりたかったこともできて嬉しいです。

●まさかのベースとサックス二刀流

――その後、人気シリーズの劇場版第2弾『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』が公開。ハマり役となった鈴井涼太の成長も見どころでした。

 撮影したのは前の年(20年)、「私たちはどうかしている」の後だったんですが、「しばらく鈴井くんと会ってないなぁ」という気持ちですね(笑)。ひょっとしたら、どこかで求めているのかもしれません。今回は鈴井くんの新しい一面を見られて嬉しかったですが、どのキャラクターも「また会いたい」と思わせてくれるんですよね。その後、会長役の池田イライザさんとは「ゴチ(になります!)」でお会いしていますが、「制服着てるし、ギャンブルしてるし、なんか『賭ケグルイ』みたいですよね」というような話はしました(笑)。

――夏に放送されたのが、主演ドラマ「ホメられたい僕の妄想ごはん」。料理と女性との妄想好きなベース奏者・和田理生を演じました。

 じつは、ほぼ同じタイミングで、『異動辞令は音楽隊!』でサックスを吹くのが決まって、「え! 僕ベースとサックスやるんスか?」と一瞬、戸惑ったことを覚えています。僕の性格上、辛かったことは忘れるんですが、「僕の妄想ごはん」のベースに関しては、人生のトップ3に入るぐらい辛かったし、忙しかったです。ゲーミングチェアに座りながらベースを練習していて、指を動かしながら、寝落ちすることもありましたし、練習スタジオが一緒だったこともあり、ベースとサックスを一緒に持って移動したこともありました。外出するとき、鏡で自分の姿を見て、「何の職業なんだ?」と思うこともありましたが、本当に面白かったから、できることなら、あの頃に戻りたい気持ちもあるんですよね(笑)。

――毎回毎回、女性ゲストを迎えるホスト的な役割をすることの大変さもあったと思います。

 よくお分かりで!! ドラマ「セトウツミ」以来の連ドラ主演だったんですが、自他ともに認める人見知りであるので、確かに大変ではあったんです。でも、「それでも何とか頑張ろう!」と思えるようになったんです。そんな僕自身の成長が著しい! ゲストの方と小さいテーブルを挟んで、対面しての撮影がほとんどでしたが、「そんな短い時間でも楽しんでいただきたい」という思いも湧きましたし、主演や座長の方の素晴らしさを痛感しました。

~次回は最新出演作『異動辞令は音楽隊!』についても語っていただきます~

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高杉真宙(たかすぎ・まひろ)

1996年7月4日生まれ。福岡県出身。2009年に俳優デビューし、『カルテット』(12)で映画初主演。『ぼんとリンちゃん』(14)でヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。『散歩する侵略者』(17)で第72回 毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞受賞。以降、ドラマや舞台で活躍するほか、現在はバラエティ番組「ぐるぐるナインティナイン」にレギュラー出演中。

『異動辞令は音楽隊!』

高齢者を狙うアポ電強盗事件で、強引な捜査を行い、広報課内の音楽隊への異動を言い渡された、捜査第一課のベテラン刑事・成瀬(阿部寛)。不本意ながらも音楽隊を訪れる彼だったが、そこにいたのはトランペット奏者の来島(清野菜名)やサックス奏者の北村(高杉真宙)ら、どこか覇気のない隊員だった。
2022年8月26日(金)より全国公開
https://gaga.ne.jp/ongakutai/

Column

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2022.08.12(金)
文=くれい響
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=荒木大輔
ヘアメイク=堤 紗也香