日本のワイン界に新風を吹き込む山形の二つのワイナリー

 ここ数年、数々の国産ナチュラルワインが注目されるなか、ワイン通の間で話題にのぼるのが山形県の「グレープリパブリック」と「イエローマジックワイナリー」。二つのワイナリーは共に山形県南東部に位置する南陽市に醸造所を構え、自然農法でブドウを育て、ワインを生み出している。

 この地でワイン造りをする醍醐味とはーー。

 そのテーマで「グレープリパブリック」醸造責任者の矢野陽之さんと夫婦二人三脚で挑戦を続ける「イエローマジックワイナリー」オーナーの岩谷澄人さん・恵美さんに語ってもらった。

 座談会は南陽市の赤湯温泉郷にある宿「山形座 瀧波」にて。料理とのマッチングを楽しみながら、山形テロワールの奥深さを目の当たりにする。

ワイン用ブドウの産地が北上している現状

――山形県南陽市は明治時代の中頃からワイン造りが長年行われていた場所です。「グレープリパブリック」は2017年に誕生したワイナリーですが、実際に手がけてみて、ワイン造りに適した風土だと実感されていますか?

矢野 そうですね。南陽市は湿度が比較的低くて、ブドウの収穫時期は寒暖差がきちんとあるので、求めているブドウが作りやすい気候だと思います。うちは有機栽培で育てているので湿度が高いとブドウが病気になりやすいので湿度は重要。それと、酸化防止剤を使っていないため、酸が強めであることが不可欠なんです。ブドウに酸が十分にあることで、バクテリアから守られますからね。

岩谷 日本の法律では補酸・補糖(発酵させる前に原料のブドウ果汁に酸や糖を加えること)が許されているけど、山形のブドウには、昔から補酸という概念がないくらい、しっかり酸がある。いまや日本において、亜硫酸塩を入れずにワインを造れる最南限が山形かもしれないね。温暖化の影響もあって、山梨でも山形からブドウを仕入れているワイナリーが増えているという話はよく聞きます。

矢野 僕もそう思います。日本でも北の産地じゃないと亜硫酸塩を入れずに、または入れたとしても極少量でワインを造るのは難しい。長野はぎりぎりいけるかな。いろんな条件からみて、南陽市の赤湯エリアは、風で湿気を飛ばしてくれるし、水捌けがいい優れた土壌です。ブドウにとっては苦しいんですけどね。過酷な環境のほうが、ワイン造りに適したブドウが採れます。

――岩谷さんは滋賀県の「ヒトミワイナリー」の立ち上げから携わり、長年日本のワイン界を牽引。その後、南陽市に移住し、2019年に「イエローマジックワイナリー」を開きました。この地を選んだのは理想的なブドウがあったから、と伺いました。

岩谷 「ヒトミワイナリー」にいた時から、寒暖差を利用したキュンとした山形のブドウがいいなと思っていて、年間70トンくらい仕入れていました。全部が美味しかった。年1回は畑を見に来ていて、作ってみたいブドウがここにあると思って。

 南陽市の置賜盆地(おきたまぼんち)はすり鉢状の地形で、乾いた風が逃げずに溜まったまま。適度な湿度もあるから植物の育成にすごくいい場所なんだよね。とにかく置賜のデラウエアが面白くて、借金までして、ここに来た。50代になっても日本のブドウへの夢がまだまだあるから。

2022.07.30(土)
文=CREA編集部
撮影=長谷川 潤