今年の夏は地球を感じ、自然と一体化できる宿へ旅に出てみませんか。

 雄大な大自然の中、名湯に身をゆだねれば、心も体もデトックス。そんなエネルギーをもらえる温泉宿を5軒ご紹介。


原始の森に抱かれた、静かな湖畔ステイ

●界 ポロト[北海道/白老温泉]

モール温泉と湖が ひとつになるような錯覚 

 視界すべてに大自然が広がるような場所に行きたい。雄大で、空気が澄みきっていて、心ゆくまで温泉に身を任せられる所へ。そんな思いで向かったのは、北海道・ポロト湖畔の宿だ。

 南西部に位置する白老町の市街からすぐの場所にありながら、原始の自然休養林や湿原が周囲に広がるポロト湖。アイヌ語で「大きな沼」という意味をもつこの湖のほとりに今年開業したのが「界 ポロト」だ。全室レイクビューというロケーションに加えて、世界でも珍しいモール温泉が楽しめる。

 客室に足を踏み入れたとたん、大きな窓いっぱいにポロト湖の景色が広がる。湖面を渡る銀色のさざなみ、緑豊かな森林。まるでプライベートレイクのような贅沢さだ。湖面にせり出すとんがり屋根は、モール温泉の湯小屋「△湯」。太古の植物に由来する有機物が含まれ、“美肌の湯”ともいわれるモール温泉は、茶褐色の湯がとろりとなじむような肌触り。露天風呂の先はポロト湖へと続き、湖面を漂うような解放感が湧き上がってくる。

 夕食までの時間は、窓辺のソファでのんびりと。刻一刻と色合いを変えていく初夏の夕空が美しく、雲の流れにも北海道のダイナミズムを感じる。その豪快さは、夜の食事にも。北海道ならではの食材をふんだんに使った会席料理で、メインは、毛蟹や大きな帆立貝が丸ごと入ったブイヤベース仕立ての「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」。程よいサイズの地酒の飲み比べセットを合わせ、ひとりでじっくりと味わう。

ポロトの自然が心まで解放してくれる

こわばりかけた心と体が 朝日とともに目覚める 

 寝しなにもうひとつの湯処「○湯」で温まった効果なのか。驚くほどぐっすりと眠り、気持ちよい目覚めとともに朝を迎えた。朝食前に散歩しようと外へ出ると、迎えてくれるのは静かな湖に響き渡る様々な鳥たちのさえずり。湖の周囲には美しいポロト自然休養林が広がり、軽いトレッキングが楽しめる。湧水が流れる湿原にはミズバショウが咲き、ミズナラやクリの巨木は空へと背を伸ばす。遠くには樽前山の稜線がくっきり描かれていた。

 宿に戻る道すがら、青空と森の緑を映す湖面を眺めながら、思い切り深呼吸。息苦しい日常のなかでこわばりかけていた心身が、解放され、新しく目覚めていく。そんな時間が、夏の光さしこむ湖のほとりに待っていた。

 星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」。各地の個性的な伝統工芸、芸能などを満喫できる「ご当地楽」や、その地域に根ざした設いを楽しめる「ご当地部屋」など、地域の魅力と湯治文化を大切にした宿づくりが魅力だ。「うるはし現代湯治」は、現代人の生活にフィットした湯治プログラム。温泉の泉質などの知識をもつ「界の湯守り」が「温泉いろは」や「現代湯治体操」を紹介してくれるほか、施設ごとの「お湯印」を集めることができる「お湯印帳」なども用意されている。ひとり旅でのおこもり滞在にぴったりな「おひとり温泉休息プラン」も人気を集めている。

●湯冷ましつぶやき

モール泉は保湿液のようにとろみがあるのが特徴。湯から出た際には足がすべりやすいので注意。

界 ポロト(かい ポロト)

所在地 北海道白老郡白老町若草町1-1018-94 
電話番号 0570-073-011(界予約センター)
ひとり料金 1泊2食付き 39,000円~
ひとり対応 通年
アクセス JR白老駅から徒歩10分
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/ 

●推薦してくれたのは……

山路美佐さん[B.EAT代表]

2022.06.27(月)
Text=Yuko Harigae(Giraffe)/界 ポロト、Chiaki Tanabe(Choki!)/山里のいおり 草円
Photographs=Tetsuya ito/界 ポロト

CREA 2022年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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